67%が事業拡大の方針、南部市場に期待-進出日系企業実態調査からみた投資環境(1)-

(ベトナム)

ハノイ発

2017年04月21日

 ジェトロは、「2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果を基に、ベトナム進出日系企業の経営や活動状況についてセミナーなどで説明している。ベトナムでは前年度調査に引き続き、回答企業の66.6%が事業拡大を予定しており、周辺国と比べ高い割合になっている。本稿では、同調査からみたベトナムの投資環境を2回に分けて解説する。

非製造業で高い黒字企業の割合

2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」において、ベトナムでは過去最多の639社(前年度比82社増、有効回答率49.7%)の進出日系企業から回答があった。地域別では、北部・中部が328社、南部が311社だった。業種別では製造業が409社で、非製造業が230社だった。また製造業のうち、輸出加工企業(以下、EPE)が150社、非輸出加工企業(以下、Non EPE)が135社だった。(前年度調査については、ブラック ジャック ゲーム4月11日記事参照)

2016年の営業利益見通しについては「黒字」と回答した企業の割合は、ベトナム進出日系企業では62.8%で、「均衡」が12.1%、「赤字」は25.1%となった(図1参照)。業種別では、非製造業で黒字と回答した割合は67.5%で、EPE(59.3%)、Non EPE(62.2%)と比べて高かった。非製造業については、内需指向型が多いと考えられ、近年の安定した経済成長が、非製造業の業績に好影響を与えているといえるだろう。実際、ベトナムの食品市場開拓に注力する日系コンサルタントは「行政手続きなどで難しさはあるものの、市場は拡大しており、チャンスは多い」と語る。

図1 2016年の営業利益見通し

設立年度別の黒字割合を比較すると、営業年数が長いほど高くなる傾向にある。特に2011年度以降に設立された企業の黒字割合は、2010年度以前と比べるとかなり低い水準となっている。進出企業では、設立から5年程度を経ると経営が安定し、7割程度の企業が黒字化していくことが推測される(図2参照)。これは、製造業、非製造業ともにほぼ同じ傾向だ。

図2 ベトナムでの設立年度別2016年営業利益黒字の見通し

進出日系企業の3社に2社が今後の事業を拡大へ

今後の事業展開について、ベトナムでは回答企業の66.6%が事業を拡大する方針としており、周辺国のフィリピン(54.4%)、インドネシア(51.6%)、タイ(50.1%)、マレーシア(44.1%)、中国(40.1%)と比較して高い割合になっている。前年度の調査でも、ベトナムは63.9%の企業が事業拡大方針と回答していた。

事業を拡大する理由としては、「売り上げの増加」が最も多く、製造業(88.2%)と非製造業(86.9%)とで大きな差はみられなかった(表参照)。他方、「成長性・潜在力の高さ」と回答した企業の割合は、製造業の35.7%に対して非製造業が62.5%と高くなっている。地域別では、北部よりも南部の方が10.7ポイント高く、南部の市場拡大に対する期待の高さがうかがえる。電気・電子関連の日系メーカーは「当社の事業は労働集約型で、自社全体の生産増加については、中国よりも人件費が安いベトナム工場で対応している」とし、周辺国と比較したコスト競争力がベトナム拠点での売り上げ増加と事業拡大意欲につながっていることも考えられる。

ベトナムでの事業拡大の理由(単位:%)
理由 総数
(n=423)
北部
(n=189)
南部
(n=220)
製造業
(n=263)
非製造業
(n=160)
売り上げの増加 87.7 88.4 86.4 88.2 86.9
成長性・潜在力の高さ 45.9 40.2 50.9 35.7 62.5
取引先との関係 22.2 24.3 20.0 19.4 26.9
生産・販売ネットワーク見直し 15.8 16.9 15.0 18.6 11.3
高付加価値製品への高い受容性 15.4 15.9 13.6 16.7 13.1
コストの低下(調達コストや人件費など) 6.6 7.4 6.4 8.4 3.8
労働力確保の容易さ 5.2 4.8 5.9 6.5 3.1
規制の緩和 2.8 2.1 3.6 1.9 4.4

(出所)図1に同じ

(伊藤恵太)

(ベトナム)

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