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(EU、カナダ)
ブリュッセル発
2017年02月16日
欧州議会は2月15日、EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)を承認したと発表した。同議会によると、早ければ4月1日から関税などの暫定適用を開始する見通し。議会承認に向けて尽力したアルティス・パブリクス議員は「保護主義を克服し、双方の市民のために壁ではなく橋を築く」と語った。
<貿易拡大にとどまらない経済効果に期待>
欧州議会は2月15日、2016年10月30日に調印した「EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)」(2016年10月31日記事参照)を承認したと発表した。票決結果は賛成408、反対254、棄権33だった。
CETAをめぐるEUとカナダの交渉は2009年5月に開始が発表され(第1回交渉:2009年10月)、2014年9月に妥結した。その後、ベルギー南部のワロン地域政府(フランス語圏)が調印に反対するなどの混乱もあったが(ブラック ジャック ランキング継続-)、2016年10月30日のEUカナダ首脳会議で調印にこぎ着けた。2015年のEUからカナダへの商品輸出は352億ユーロ、EUのカナダからの商品輸入は283億ユーロに達しており、欧州議会ではCETAが完全適用されると貿易額が約20%拡大すると見込んでいる。
欧州議会によると、CETAの効果はこうした貿易拡大にとどまらず、広範な商品についての技術的基準の相互承認が進むほか、EUのサービス産業がカナダ市場に円滑にアクセスできるようになるという。また公共調達については、EU市場は既に域外企業に開放されている一方、カナダ側は連邦レベルのみならず自治体レベルでも市場開放することになるとしている。さらに、これまでEUが食品・飲料分野で確立してきた140を超える地理的表示についても、カナダ市場で権利が保証されることになる、などと欧州議会はEU側のメリットを強調した。
ただし、欧州議会は酪農品、鶏肉、卵など一部農産品の関税撤廃については見送られたことも認めている。
<「カナダとは壁ではなく橋を築く」>
欧州議会の最大会派・欧州人民党グループ(EPP)所属のパブリクス議員(ラトビア選出)は「CETA承認を通じて、われわれは保護主義や景気低迷を克服し、オープンで成長する、高い生活水準の経済社会を選択する。カナダはわれわれと価値観を共有し得る国であり、信頼できる同盟国だ。双方の市民のために、壁ではなく橋をカナダと築き上げたい。CETAは今後の世界の通商協定にとっての『灯台』としての役割を担うだろう」と語っている。米国のトランプ政権が北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を進める中、EUとしてはカナダとの関係強化を図る姿勢だ。
これまで先進国とのFTAに対しては、一部のEU市民から「多国籍企業を利するだけではないか」「健康・安全・環境を保全するために政府が規制をかけることができなくなるのではないか」という懸念が出ていたことについて、EU・カナダ両政府は、CETAによって各国に国内法で認められている規制の権限が損なわれることはないとの認識を示している。欧州議会は、これらの市民の懸念についてEU・カナダ両政府が最大限の配慮に努めたことも強調した。
<協定発効には当事国や地域政府の批准が必要>
特に国家と投資家の間の紛争解決手続きについては、国際商事仲裁方式を活用した米国型の第三者を通じた解決手続き(ISDS)に対して、EU側の警戒感は根強く、論議になってきた。欧州議会はこうした懸念を払拭(ふっしょく)すべく、CETAではISDS方式と異なる「投資裁判所制度(ICS)」を導入させたことを強調している。ISDS方式だと、EUの理念を共有しない第三国の商事仲裁に解決を委ねることになり、EUの理念を否定する判例が確立されかねないという問題意識がEU側にあったがICS方式なら、裁判官(調停者)の人選を含めてEU側当事国が影響力を行使できるため、EU理念になじまない判例が乱立する事態は避けられると欧州議会はみている。
欧州議会によると、CETAは早ければ4月1日から、関税などEUが排他的権限を持つ分野についての暫定適用を開始する見通しだという。しかし、CETAは欧州委員会が2016年7月に「混合協定」と認定しており、協定の発効には当事国や権限を持つ地域政府の議会(ベルギー・ワロン地域含む)での批准手続きが必要となる。
○関連のジェトロ調査レポート「EUカナダFTA(CETA)の交渉状況(2013年7月)」
(前田篤穂)
(EU、カナダ)
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