産業団体は柔軟な移民制度の構築など求める-メイ首相が示したEU離脱の基本方針への反応-

(英国)

ロンドン発

2017年01月20日

 英国の主な産業団体は、テレーザ・メイ首相が1月17日に示したEU離脱交渉における政府の基本的な方針に対するコメントを発表した。今後の交渉見通しについての不確実性が低減したことを歓迎しつつ、WTOルールに基づいて貿易を行わざるを得ない事態に陥ることを回避することや、幅広い労働者へのアクセスを保証する柔軟な移民制度の構築などを政府に求めている。

WTOルールに頼らざるを得ない事態を懸念>

 主な産業団体のコメントをみると、英国産業連盟(CBI)は、これまで産業界を覆っていた不透明性が払拭(ふっしょく)されたことを歓迎するとした上で、政府の方針が定められた以上、円滑で秩序あるEUからの離脱が英国にとっての優先事項と強調した。新たなEUとの通商関係については、WTOルールに頼らざるを得ない事態に陥ることを懸念しているとした。

 英国商工会議所(BCC)も、EU側との交渉で影響が出ることに備えてメイ首相が方針を示したことを歓迎しているが、課題はなお多いとしている。まず、北アイルランドとアイルランドの国境について、メイ首相は移動の自由を認める共通旅行区域(CTA)の維持を訴えたが、そのための具体的な方策が示されていないと批判的だ。また移民受け入れ制度についても、現行のように硬直的で費用がかさむようなものでは、有能な人材を確保する足かせになるとしている。

 これまで各産業団体は、政府の交渉に当たる方針やその進捗などを明らかにするよう求めてきた。この点、英国経営者協会(IoD)は、政府の「実況解説」は期待していないが、交渉状況を適宜アップデートして明らかにするよう要請している。

<中小企業も適材適所の人材採用が可能な移民制度を訴える>

 EU離脱通知を政府の判断で行えるのか否かが最高裁で争われるなど、議会がEU離脱にどう関与するのかが大きな論点となっている。製造事業者団体(EEF)は、交渉の最終的な合意内容は議会の審議で明らかにされるべきだとして、政府が議会に明確な根拠を伴う交渉計画を示すよう求めた。

 自動車製造販売者協会(SMMT)は、メイ首相が自動車セクターを念頭に単一市場への英国企業のアクセス確保に言及したことを評価し、関税同盟を離脱しつつもEUとの無関税かつ非関税障壁のない貿易が実現するよう交渉を進めることが必要とした。

 金融サービス関連の業界団体ザ・シティUKは、金融業のように規制の多い産業では十分な移行期間が必要になるとして、メイ首相がEU離脱に向けた段階的アプローチの姿勢を表明したことを歓迎している。英国が引き続きブラック ジャック ディーラーからの優秀な人材を引きつけるためにも、国境を越える異動などを許容するような移民受け入れ制度を構築することが必要としている。

 移民受け入れについては、小規模企業連盟(FSB)がコメントを寄せ、適材適所の人材採用を中小企業が適時行えるものでなければならないとした。食品・飲料連盟(FDF)も、熟練労働者・非熟練労働者の双方へのアクセスが可能となる制度の必要性を指摘している。

(佐藤央樹)

(英国)

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