モディ首相、高額2紙幣の廃止を突如発表-偽造や不正蓄財の根絶が狙い-

(インド)

ムンバイ発

2016年11月10日

 モディ首相は11月8日、500ルピー(約800円、1ルピー=約1.6円)と1,000ルピーの高額紙幣を廃止すると発表、直ちに施行した。「地下経済」の資金の浄化や偽造紙幣の撲滅などが狙い。これに伴い政府は新500ルピー札と2,000ルピー札を発行する。2種類の旧紙幣は、11月10日から12月30日までに、銀行などで新紙幣と交換するか預け入れする必要がある。しかし、一度に交換・預け入れできる金額に制限や条件があり、混乱するのは必至とみられる。

<地下経済に眠る高額紙幣の浄化図る>

 モディ首相は118日午後8時にテレビ演説で、「500ルピー札と1,000ルピー札の使用を午後12時以降禁じる」との声明を発表した。100ルピー以下の紙幣は対象外。偽造された高額紙幣がテロや麻薬取引の資金源となっていることや、高額紙幣による不正蓄財をその理由に挙げている。インドの地下経済の規模はGDP24割に相当するとされ、そこに眠る不正な高額紙幣を不意打ちの措置によって白日の下にさらすことで、根絶につなげたいという強い意志がうかがえる。

 モディ首相は20145月の就任以来、農民や貧困層などに銀行口座を開設させる国民皆銀行口座制度を進める一方、汚職撲滅のスローガンの下、政府への各種申請や手続きの透明化を進めるなどしてきた。今回の旧高額紙幣の無効化もその延長線上にあると考えられる。

1230日までに交換・預金する必要>

 インド準備銀行(RBI)の発表によると、旧高額紙幣は以下の手続きで、1230日までに交換もしくは預金する必要がある。

○交換については、4,000ルピーが上限だが、上限額は1125日以降に見直される予定。手続きに際しては身分証明書を提示する必要がある。

○預金については、顧客確認書類(KYC)に不備がある場合は5万ルピーが上限。

○銀行からの現金引き出しは、11万ルピー、1週間2万ルピーを上限に可能。上限額は1125日以降に見直される予定。

ATMからの現金の引き出しについては、1118日まではカード1枚当たり12,000ルピー、19日以降は14,000ルピーを上限に可能。RBIの指示があるまでは、ATMでの引き出しは50ルピー札か100ルピー札に限定される。

<経済活動への影響を懸念する声も>

 なお、政府は激変緩和措置として、1111日までは、政府系の病院・薬局やガソリンスタンド、鉄道や空港カウンターでのチケットの購入などについて、旧高額紙幣の受け取りを継続する旨発表した。

 国民皆銀行口座制度の推進で銀行に口座を開いても実際には残高ゼロで利用していない人も多く、クレジットカードに至っては普及率が2%にも満たないとされるインドでは、高額紙幣に限るにせよ、現金の使用が大幅に制限されることに伴う日常生活の混乱は必至とみられ、現金決済が中心となっている経済活動への影響を懸念する声も出始めている。

(朝倉啓介)

(インド)

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