遠大な「アジアスーパーグリッド」を5ヵ国で構想-モンゴル経済の現状と課題(4)-
(モンゴル)
中国北アジア課
2016年11月17日
モンゴルビジネスの可能性を展望する連載の最終回は、再生エネルギーの未来について。モンゴルは、化石燃料の発電割合を引き下げて再生可能エネルギーを増やす方針の下、国内で発電した電力を、日本、中国、ロシア、韓国へ巨大送電網で送る遠大な「アジアスーパーグリッド」構想を描いている。
<ゆくゆくは日本や韓国へ電力を輸出>
モンゴルは1990年代初頭に社会主義から資本主義に変わり、民間企業の設立が可能になった。Newcom(ニューコム)グループは1993年に設立され、戦略的なインフラ投資を実施し、業界トップの国際企業とも長期的なパートナーシップの実績を有するほどになった。
モンゴル貿易投資フォーラムの資料「モンゴルの再生可能エネルギーの未来とこの分野の投資環境」によると、日本の企業ではKDDIや住友商事と一緒にモンゴル初の携帯電話会社を設立し、2016年に20周年を迎えた。現在では市場シェアが1位となっている。モンゴル初の官民パートナーシップにより実現した「第5火力発電所」の開発案件では、双日やフランスのエネルギー大手エンジー(Engie、旧社名GDFスエズ)、韓国のポスコエナジー(POSCO ENERGY)と提携した。
そのニューコムグループとソフトバンクグループのSBエナジーの合弁会社クリーン・エナジー・アジアのガンホヤグ最高経営責任者(CEO)によると、大規模風力・太陽光など再生可能エネルギー発電所計画(Gobi Green Energy)では、ソフトバンクが南ゴビ砂漠に神奈川県ほどの広さがある2,500平方キロの土地を所有しており、ゆくゆくは、アジアスーパーグリッド(注)経由で日本や韓国などへ電力を輸出したいとのことだ。
<再生可能エネルギーによる発電を拡大予定>
モンゴルは、日本や中国など周辺国の発電形態を比べ、化石燃料による発電量の割合が高く、再生可能エネルギーは低い。今後の電力需給の安定を考えると、化石燃料の割合を下げ再生可能エネルギーを増やす必要がある。また、モンゴルで発電された電力は国内で消費し切れないため、輸出の可能性について政府も民間も期待を寄せている。
2015年に策定された「エネルギー国家政策」では、再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%、2030年までに30%にすることを目指す。今後、関連法律と税制環境の整備を進めて投資を増加させ、再生可能エネルギーによる発電量拡大につなげることにしている。
(注)「アジアスーパーグリッド」とは、日本、中国、ロシア、韓国、モンゴルの5ヵ国をつなぐ構想。北東アジアの共同電力インフラの可能性調査を行うため、ソフトバンク、中国国家電網、韓国電力公社(KEPCO)、ロシアのロセッティ(ROSSETI)の4社が共同で進めており、2016年3月に北京で覚書(MOU)を締結、モンゴル政府・民間企業は全面協力している。
(黄海嘉)
(モンゴル)
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