高裁が運送など特定業種の登記差し止め命令を取り消し
(バングラデシュ)
ダッカ発
2016年10月06日
高等裁判所はこのほど、4年前に出したサービス産業の特定業種(運送、商社、教育、広告代理店、旅行代理店など)の登記差し止め命令を取り消した。これにより、運送企業などの現地法人設立が可能となったが、法人設立の際には、差し止め命令が出ていた間に外資系企業の出資比率が変更されていることに留意する必要がある。
<外資参入制度と運用にねじれ>
バングラデシュのサービス産業においては、資本比率などの規制はあるものの、外資参入を明確に禁止する制度はない。一方、高等裁判所が2012年4月に、サービス産業の特定業種〔運送(注)、商社、教育、広告代理店、旅行代理店など〕の登記を差し止める命令を出したことで、制度と実際の運用にねじれが生じていた。しかし、2016年3月16日に高裁がこの差し止め命令を取り消す判決を出したため、これらの業種での外資参入が再び可能となった。
発端は、2005年に投資庁(BOI)長官が各省庁に出した指令にある。この指令は、(1)投資額が少ないにもかかわらず、投資優遇措置(長期ビザなど)を利用している、(2)投資優遇措置を受け、バングラデシュで活動する外国人が給与を介して外貨を流出させている、(3)こうした不当な投資や外国人流入がバングラデシュ人の雇用を奪っている、などとして特定のサービス産業への外資参入を規制することが目的だった。しかし、外資規制の効果が上がらなかったため、地元の業界団体がBOIを管轄する商務省を訴え、高裁が登記差し止め命令(指令の執行命令)を出すこととなった。
しかし、外国企業からの差し止め命令取り消しの強い要望を受け、高裁は4年前に出した命令を無効とした。もともと差し止め命令に係る通達などは出されていなかったため、今回の高裁判決に伴う通達は発出されていない。しかし、ジェトロがBOIと商業登記所(RJSC)にヒアリングを行ったところ、各省庁が今回の判決を認識しており、これまで登記ができなかった業種についても登記可能との回答があった。
<運送企業を中心に外国投資が加速か>
登記差し止め命令が出されていた間、該当業種の日系企業の進出は困難だったため、業種を変更したり営業活動ができない駐在員事務所を設立したりして活動を行うしかなかった。特に日系運送企業においては、差し止め命令が出される前に進出していた企業とそれ以降に進出した企業がそれぞれ複数あり、後者は駐在員事務所を設立するにとどまっていた。後者の企業にヒアリングを行ったところ、「既にパートナーとの調整が済んでおり、駐在員事務所としての対応方法を確立した。急いでパートナーとの合弁企業を設立することはリスクもあるため、是が非でもとは考えていないが、再検討する予定だ」としており、駐在員事務所の形態で進出していた運送企業を中心に外国投資が加速することが予想される。
なお、歳入庁(NBR)は2015年に運送業の資本規制に関する通達を出し、外資系の資本比率を改定している。それまでは49%の出資が認められていたが、改定で40%が上限となった。既に40%を超える出資をしている企業がこの通達に準ずる必要があるかについては明記されていないものの、今後登記を予定している企業は留意する必要がある。
(注)運送には陸運、海運、航空貨物輸送が入る。
(古賀大幹)
(バングラデシュ)
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