英政府との離脱協議、EU側首席交渉官にバルニエ氏
(EU、英国、フランス)
ブリュッセル発
2016年08月01日
欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長は7月27日、英国政府との離脱協議でEU側の責任者となる首席交渉官として、フランスの右派系政治家ミシェル・バルニエ氏を任命した。10月1日に就任し、EU基本条約(リスボン条約)第50条に基づく協議のかじ取り役を担う。
<フランスから「交渉のプロ」を登用>
欧州委の発表(7月27日)によると、バルニエ氏は欧州委の「総局長級」だが、ユンケル委員長の直属となる。協議のテーマに応じて、欧州委の各総局長から専門的な助言を得ることができる。
ユンケル委員長は「この困難な仕事には経験豊かな政治家が必要で、バルニエ氏は熟練した『交渉のプロ』だ。フランス政府では外相、食料・農業・漁業相を務め、欧州委員(域内市場・サービス担当)としての経験もある。EU加盟国の政府中枢や欧州議会にも幅広い人脈を持つ。この意味で、今回の重責を担う適任者と判断した」と、バルニエ氏を評した。
また、英国との離脱協議については、「彼が新しい課題に挑戦し、職務を全うすることで、英国のEU離脱以降も双方が新しいパートナーシップを構築できると確信している」とコメントした。
<欧州議会の最大会派に所属>
バルニエ氏は1951年1月生まれの65歳。1972年にパリの欧州ビジネススクール(EBS)を卒業後、フランスの地方政界から国政に進出した。2015年2月からはユンケル委員長の下で、欧州防衛・安全保障政策担当の特別顧問を務めてきた。
なお、バルニエ氏は欧州議会の最大会派である中道右派の欧州人民党グループ(EPP)に所属し、フランス選出EPP議員団代表を務めたこともある。EPPは欧州議会の中でも、英国のEU離脱に対して最も厳しい姿勢で臨む方針を取っている(2016年6月28日記事参照)。こうした従来の政治姿勢が離脱協議にどのように影響するか注目される。
(前田篤穂)
(EU、英国、フランス)
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