メイ内相、13日にも首相就任へ-レッドソム閣外相が保守党党首選から撤退-

(英国)

ロンドン発

2016年07月12日

 保守党党首選の最終候補者2人のうち、アンドレア・レッドソム閣外相(エネルギー担当)が7月11日、党首選からの撤退を表明した。これにより、テレーザ・メイ内相が新党首となることが確定し、13日にも新首相に就任することとなった。故マーガレット・サッチャー氏以来、英国史上2人目の女性首相になる。

<政治的空白の回避も撤退理由の1つ>

 レッドソム閣外相は711日、報道陣の前で声明を発表し、「EUからの離脱交渉を始めるには強力なリーダーシップが今すぐにでも必要であり、9週間にわたる党首選は、このような非常時に望ましくない」と、政治的空白の回避が撤退理由の1つと説明した。そして、保守党下院議員による2度目の投票で、メイ内相が投票数の6割に当たる199票を集めた一方、自身は84票にとどまったことから、「強く安定した政府を率いる支持基盤としては不十分」で、迅速な首相選びのためにも自らが党首選から降りることを決断したと語ったものの、撤退の理由についてこれ以上の詳細説明は避けた。

 レッドソム閣外相については、国政に携わったのが2010年からと政治キャリアが比較的浅いことから、分裂する保守党内の結束を図り、困難なEUとの交渉をまとめ上げる力量を疑問視する声が上がっていた。また、「タイムズ」紙(電子版79日)のインタビューで、メイ内相に対する差別的な発言をしたと批判され、謝罪する事態に至っていた。

<企業統治の新たな仕組み導入も>

 レッドソム閣外相の撤退を受け、メイ内相の次期保守党党首および首相への就任が事実上決定した。保守党党首については当初、99日に党員による投票結果が判明した後、102日の党大会での正式就任が予定されていたが、レッドソム閣外相の撤退を受け、キャメロン首相が13日に辞任し、同日夜までにメイ内相が新首相に就くことになった。

 メイ内相は、レッドソム閣外相の撤退表明に先立つ711日午前に、首相就任後の政権運営の方向性を表明した。それによると、「英国のEU離脱は離脱すること」であり、EU残留や再加盟、再国民投票は行わないとした。また、政権運営の3つの綱領として、「英国民に資する将来ビジョンの策定」「保守党内部や国内の団結」「強いリーダーシップ」を掲げた。経済政策については、大企業の企業統治の在り方を問題提起し、消費者や労働者による経営参加や、経営層の報酬決定に株主の関与が可能になるような仕組みづくりを行うとしている。さらに、人種、性別、階級などに起因する格差問題にも取り組む姿勢を示している。

 なお、英国の代表的な株価指数のFTSE100FTSE250とも、メイ内相の首相就任が確実と報じられて以降値を上げ、政治の安定に一定の見通しがついたことを好感している。

(佐藤央樹)

(英国)

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