重税に企業が反発、カジノ 無料
(コロンビア)
ボゴタ発
2016年03月02日
コロンビアでビジネスを行う上で課題の1つとされるのが負担の大きい税制だ。たびたび改革が行われて税務は煩雑になっている。2014年末の税制改革で公平税(CREE)が据え置かれたり、保有資産税が新設されたりするなどして、企業の負担はさらに重くなった。企業の反発は強く、新たな税制改革案が3月半ばから議会で審議される予定だ。
<過去20年に13回も税制改革、ビジネスの障害に>
世界銀行が発表している「Doing Business」で、コロンビアは189ヵ国中、2015年34位、2016年54位となっており、中南米諸国の中ではビジネスがしやすい国とされている。2016年を評価基準項目別にみると「信用力」(2位)、「小規模投資家保護」(14位)などは上位にあるものの、「徴税」は136位と中南米諸国の中でも低い評価となっている。2016年の総合順位が54位に下がった背景には、2014年末に行われた税制改革がある。ジェトロが2015年10~11月に行った「中南米日系進出企業経営実態調査」でも、財務・金融・為替面での問題点として、52.4%の在コロンビア日系企業が「税務の負担」と回答している。税制改革前の2014年の調査時は27.8%にとどまっていた。過去20年間に13回におよぶ税制改革が行われ、複雑化した税制が混乱を招きビジネスの障害になっている。
<公平税など2014年改革の主な変更点>
税は国税と地方税に分かれている。国税には法人税、臨時利益税、金融取引税、付加価値税、保有資産税、消費税などがあり、地方税には工業・商業税、固定資産税、登記税などがある(表1参照)。
2014年12月に行われた2014年法律第1739号における税制改革は、CREE、金融取引税、保有資産税の変更が主な内容だ。
CREEは2012年法律第1607号によって、2013年1月1日に導入されている。2013~2015年は9%の税率が適用され、2016年からは8%に引き下げられる予定だったが、2014年法律第1739号によって9%に据え置かれた。同様に2015年から2018年の時限措置として、8億ペソ(約2,400万円、1ペソ=約0.03円)の課税所得額を超過する所得については一定税率(2015年5%、2016年6%、2017年8%、2018年9%)が上乗せ課税される。
金融取引税は2006年法律第1111号により始まり、銀行口座からの振り込み、引き落としなどの口座間取引に0.4%課税される。2014年法律第1739号によって、2018年までは税率0.4%を維持し、以降毎年0.1%ずつ下げ2022年に廃止することが決まった。
保有資産税は2006年に制定された財産税に代わり、2014年法律第1739号によって新設された。2015年1月1日時点で10億ペソの資産を保有する者が対象で、法人は2015~2017年までそれぞれ1月1日時点の保有資産額を基準に資産額により税率が定められている(表2参照)。
<企業収益税の導入と付加価値税の増税が焦点>
これらの税制改革に対しては、その複雑さとともに、所得の多い大企業からの税収増という安易な方法を選んだと、民間企業は反発している。それを受け、政府は専門家による税制改革委員会を設置し、税制を簡素化することを目指している。
同委員会は2015年末にマウリシオ・カルデナス大蔵・公債相に対して、今後必要とされる税制改革についてまとめた最終報告書を提出した。報告書の趣旨としては、税負担割合が偏っていることと、公平税、累進課税(簡易累進課税含む)、保有資産税を1つにまとめて「企業収益税」とすることが提案されている。さらに、付加価値税(IVA)の免除品目を減らした上で、16%の税率を19%まで引き上げ、たばこ、アルコール、燃料などに対しても増税するよう提案している。とりわけガソリンなどの燃料への課税が国際水準に比べて低いことを指摘した上、12%の税率を30%程度に引き上げることを提案している。これについて同委員会は「燃料への増税は環境保全にも好影響があり、インフラ事業の予算確保を容易にするために増税する余地は大いにある」としている。これらの次なる税制改革は2016年3月中旬からの議会で議論される見通し。
<フリートレードゾーンに1,400社進出>
「Doing Business 2016」によると、コロンビアの法人税の実効税率は69.7%と、中南米・カリブ地域の平均47.7%をはるかに上回る。この高い税率を回避する方法の1つは、フリートレードゾーンに拠点を設けることだ。投資額や雇用数に条件はあるものの、法人税は15%になり、輸入関税、IVAも保税される(商品を国内に販売した段階で課税)。
フリートレードゾーンに進出している企業は約1,400社あり、業種も物流・輸送のみならず情報通信、食品・飲料製造など幅広い。コロンビア全体では貿易赤字が膨らんでいる一方で、フリートレードゾーンからの輸出は伸びている。国家統計庁(DANE)の発表によると、2015年1~11月のフリートレードゾーンからの輸出は前年同期比24.5%増となり、輸出全体の17.7%を占める。国内市場はもちろんのこと、中米・南米北部の数ヵ国を市場として捉え、コロンビアを拠点にする場合にもフリートレードゾーンの税制インセンティブはメリットになる。
(田中井将人)
(コロンビア)
ビジネス短信 9291e8a8f1357067