適合証明書の対象変更めぐり混乱-ケニア向け輸出、運用には依然不透明感-
(ケニア)
ナイロビ事務所
2015年12月17日
ケニア向けの輸出では、同国の事前輸出基準適合認証(PVoC)に基づく適合証明書(CoC)の事前取得が求められるが、11月以降、CoC対象品目の変更をめぐって複数の公示や運用マニュアルが出され、企業の一部で混乱が生じている。運用面の不透明さを懸念する声もある。
<検査対象を原則として全品目に拡大>
従来、PVoCの対象品目をケニアに輸出する場合は、輸出者は船積み前にケニア基準局(Kebs)が指定する検査機関の検査を経て、CoCを取得しなければならなかった。CoCがない品目は、輸入者がCIF価格の15%を支払ってケニア側で検査を受ける必要があった。
こうした中、Kebsとケニア歳入庁(KRA)は11月1日付で新たな公示を出した。それによると、PVoCの検査対象品目を従来のHSコードごとに規定された品目から、12月1日以降は原則として全ての品目に拡大した上で、(1)最終製品に加工するための原料、(2)製造業者によって利用されるスペアパーツ、(3)販売を目的としない特注の機械、については検査対象から除外した。
今回の変更によって、Kebsは基準を満たさない輸入品目の流入が阻止され、消費者の健康と安全確保に役立つとしており、KRAは通関の迅速化、税収の確実な確保を達成できるとの立場だ。
<検査免除品目をウェブサイトで明示>
ところが、Kebsが11月12日付であらためて公示を出したことが混乱を引き起こした。公示は全ての輸入品目にCoCの取得が必要との旨を記載したものだったが、検査免除品目や基準が不明瞭だった。そのため、12月1日以降にケニア向けに原料を出荷する予定だったメーカーが混乱した。
その後、11月20日にKebs、KRAおよび利害関係者が会合を開き、その結果を基にKebsが11月30日付でPVoC運用マニュアルをウェブサイトに掲載した。同マニュアルによると、検査が免除される品目は以下のとおり。
(1)各種規制当局などケニア政府機関から規制を受ける製品
(2)CoCの免除措置を受ける製造業者が生産のために使用する原料、設備・機械、スペアパーツ
(3)外交官および外交使節団の荷物
(4)CoCの免除措置を受ける、または製造特例措置を受けている自動車(二輪車を含む)組み立て業者が輸入する自動車部品
(5)国際宅配便(クーリエ便)で輸入される荷物
(6)書籍、印刷物、デジタル記憶媒体
(7)Kebsからダイヤモンドマーク認証を受けた製品
(8)原産地が東アフリカ共同体(EAC)域内と証明される製品
(9)新車
(10)船積み前に使用されていた個人の所持品
(11)Kebsの指定する自動車検査機関が存在しない国から輸入される中古車
(12)国際航空会社や国際船会社が機内・船内で使用する一般消耗品
(13)再輸入品
<議会審議が不十分と反発の声も>
ケニア輸入業者連盟はPVoCの変更について、1ヵ月間という短い公示期間で議会において十分な審議がなされていないと反発している。新たにCoCの取得が必要となった日系企業は「手続きの増加、費用の発生に加え、製造から船積みまでが1週間程度伸びることになり、客先・仕入れ先との契約の修正を余儀なくされる」と話す。
他方で、公示はいずれもKebsとKRAの連名で出されているものの、マニュアルはKebsのみの名前で作成されている。このことからマニュアルに記載されている検査免除品目に該当しても、実際の通関時にCoCを提示できない場合、KRAから罰金を科されるのではないかとの声も聞かれる。新たな規制は密輸や不当に安い価格での輸入申告に対する抑止力にはなるものの、規制の適格な運用には、税関職員による収賄問題を優先的に解決しなければ、同規制の目的を達成できないという意見もある。
(島川博行)
(ケニア)
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