連邦政府、物品税などへの税源移行を閣議決定-酒税は11月から暫定的に引き上げ実施-

(ベルギー)

ブリュッセル事務所

2015年11月02日

 ベルギー連邦政府は10月10日、2016年予算案と、所得税など労働に対する課税から物品税などへ税源を移行させる税源シフト関連法案を国会に提出することを閣議決定した。消費者の購買力を維持しつつ、企業の競争力強化と雇用創出を実現するため、所得税や社会保障の負担軽減などを打ち出した。負担軽減に必要となる財源は、酒類や軽油に課される物品税などの増税でカバーする。酒税の引き上げは11月から実施された。

<月100ユーロの可処分所得増加を目指す>

 ベルギーでは長年、高い労務コストが産業競争力や雇用創出、投資誘致の足かせになっているとして問題視されてきた。今回閣議決定された法案は、所得税率の引き下げにより消費者の購買力を維持しつつ、雇用者の社会保障負担を軽減し、競争力の強化と雇用創出に結び付けることを目指している。消費者や企業の負担軽減のための財源は、酒類やたばこ、軽油に対する物品税の増税や、投機的投資行為への課税などでカバーする。

 ベルギー最大の経済団体、ベルギー企業連盟(FEB)は、前例のない労務コストの軽減につながるとして、今回の政府合意を歓迎した。その一方、連邦国家を構成する地域政府への負担増につながるとして、政府案を警戒する向きもあり、国会での激しい論戦が予想される。

 連邦政府は、2019年までに被雇用者の可処分所得を、平均で毎月100ユーロ増加させることを目標に設定した。この目標達成に向けて、所得税の基礎控除額の引き上げや、税率区分の見直し、最低税率(25%)の適用範囲の拡大などを提案した。社会保障についても、低・中所得者層の被雇用者負担率と、個人事業主の個人負担率を引き下げることを打ち出した。

<雇用者の社会保障負担率を25%以下に抑制>

 雇用創出と競争力の強化のための施策として連邦政府は、雇用者の社会保障負担率の軽減を打ち出した。例えば、ベルギーにおけるおおよその最低賃金である月給1,500ユーロ、中央値の2,800ユーロ、平均値の3,300ユーロの場合、雇用者の社会保障負担率は現行でそれぞれ17.3%、25.9%、26.7%に設定されている。これを、2019年までに10.9%、23.9%、25.0%まで段階的に引き下げたい意向だ(表参照)。

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 また、中小企業を対象に、20162020年に1人目の従業員を雇用した場合、その従業員に関する社会保障負担を、恒常的に免除する施策も打ち出した。

<軽油の燃料税も段階的に引き上げ>

 主要な財源となる物品税の増税対象として、軽油や酒類、たばこ、清涼飲料水が挙がっている。連邦政府の閣僚は、軽油に課される燃料税を、2016年と2017年に1リットル当たり0.04セントずつ、2018年に0.06セント引き上げることで合意。一方、これと並行して、20162018年にガソリンに課される燃料税を毎年1リットル当たり0.26セントずつ引き下げる。

 酒税の引き上げは、201511月から暫定的に適用が開始された。連邦政府の発表によると、ビールは1瓶当たり1セント、ワインは19.5セント、蒸留酒などアルコール度数の高いものは2.6ユーロの増税になるという。詳細な税率は連邦政府のウェブサイトに掲載されている。

 たばこ税は、2018年までに132セント(手巻きたばこは1パック2.88ユーロ)引き上げる。このほか、2016年から清涼飲料水に課される物品税を、1リットル当たり3セント引き上げる意向だ。ベルギーの清涼飲料水の業界団体FIEBは「砂糖が含まれていない飲料も増税対象に含まれている上、産業全体で製品のカロリーを下げる取り組みを行っている」として反対を表明した。

 また連邦政府は、保有期間が6ヵ月に満たない株式など金融資産の売却益にも課税する方針で合意している。

(村岡有)

(ベルギー)

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