付加価値税法改正、課税対象の売上高の最低額を引き上げ
(モンゴル)
北京事務所
2015年11月26日
付加価値税法が改正され、2016年1月から課税対象となる年間売上高の最低額が1,000万トゥグルク(約60万円、1トゥグルク=約0.06円)から5,000万トゥグルクに引き上げられる。その結果、納税者のおよそ45%に相当する約1万社が納税対象外となる。短期的に税収の減少を招くことになるが、中小企業にとって手続き面の負担軽減などプラスの効果が期待される。
<納税者の45%に当たる約1万社が課税対象外に>
2015年7月に改正された付加価値税法は、2016年1月1日から施行される。付加価値税は1998年に導入されて以来、歳入の2割強を占めてきた重要な税収源だ。税率は2007年まで15%だったが、同年の法改正により10%に引き下げられた。今回の改正では税率の変更はないものの、制度上3つの大きな変更が盛り込まれた。
第1に、課税対象となる年間売上高が1,000万トゥグルクから5,000万トゥグルクに引き上げられた。2014年の1人当たりのGDPが1998年の8.7倍に増加し、1,000万トゥグルクの条件を満たす事業者が急増した。1回の取引のみで納税対象の売上高を超える企業も多数登録されている。納税者の増加に伴い、法解釈の相違や伝票偽造といった問題も多発するようになった。世界銀行が毎年10月に発表しているビジネス環境ランキング最新版で、モンゴルの税負担は91位(前年順位より4位後退)と、その他の指標より順位が低い。課税対象売上高を引き上げることで、こうした重税感を薄めるのが狙い。この引き上げにより、納税者の45%に相当する約1万社が付加価値税の対象外となり、税収は69億トゥグルク減少すると見込まれるものの、中小企業にとっては手続き面で負担が軽減され、ビジネス環境が改善されることから、結果的に税収増につながることが期待されている。なお、売上高1,000万~5,000万トゥグルクの事業者は、希望すれば納税者登録できる。
<納税額の20%を消費者に還付>
第2に、納税額の20%、すなわち購入額の2%を消費者に還付することが定められた。これにより2つの効果が期待される。
まず、最終消費者の付加価値税の枠組みへの参加が促される。付加価値税は最終消費者が支払う消費税だが、中間事業者が消費者から預かった税金を脱税するという問題が依然として起きている。付加価値税の一部を消費者に還付することで、経済活動の捕捉を強化し、税基盤の拡大を図ることができ、税収入は徐々に増加すると見込んでいる。次に、20%を払い戻すことで消費者の税負担が軽減される。還付に加え、参加者は伝票番号を使った抽選に参加できる。当選した場合、より大きな金額が還付される仕組みも盛り込まれ、払い戻しは年に1回としている。2016年の還付は、2017年1月1日~4月1日に実施される。
<納税申告や還付手続きを電子化>
第3に、全ての事業者に抽選番号が付いた同一規格の伝票を使うことを義務付け、納税申告や還付手続きのため、システムを電子化すると定めた。財務省は税務署の協力を得てシステムの電子化を進めている。具体的には、消費者が付加価値税の納税者から財やサービスを購入する際に、同システムに登録された決済カードで支払った場合、その消費額にかかった付加価値税の20%を自動的に消費者のカードに還付する。現金払いの場合は、納税者から付加価値税の伝票をもらい、その伝票をシステムに登録することで還付申請ができる。また、規格を同一にし、電子化することで偽造伝票をおおむね削減できるとしている。
課税対象売上高の引き上げ、消費者への還付、納税手続きの電子化の3つの取り組みを盛り込んだ付加価値税法の導入が、中小企業の発展や税基盤の拡大につながると期待されている。
(バザルスレン・ボロルエルデネ)
(モンゴル)
ビジネス短信 49f00514e4d86381