付加価値税を17%に引き下げ、法人税率も引き下げ方針
(イスラエル)
テルアビブ事務所
2015年10月22日
財務省は、付加価値税(VAT)の税率を1ポイント引き下げ、17%とした(10月1日施行)。カハロン財務相は、2015年の税収額が当初の見込みを上回ったため、引き下げに踏み切ったと発表したが、これに対して中央銀行は、増収分は国債の返済に充てるべきだとしている。経済の活性化に向け、政府は2016年1月に法人税率も引き下げる方針だ。
<投資と輸出の不振が経済成長に影響>
VAT税率引き下げについて、ネタニヤフ首相はカハロン財務相とともに行った記者会見で、「停滞している経済を活性化するために導入した」と述べ、さらに2016年1月には法人税を1ポイント引き下げ、25%にする考えを示した。カハロン財務相の発言は、2015年8月現在の税収額が1,840億シェケル(約5兆7,040億円、1シェケル=約31円)と、当初見込みを26億シェケル上回っている(財務省発表)ことに基づいている。
8月16日に中央統計局が発表した2015年上半期の実質GDP成長率(前期比、年率換算、速報値)は2.6%で、内訳をみると民間消費が4.8%、公共消費が1.4%なのに対し、投資はマイナス2.9%、輸出もマイナス8.6%と不振が目立つ。輸出では工業品(ダイヤモンドを除く)がマイナス5.2%、サービス業がマイナス9.6%、農産品もマイナス26.7%などとなっている。
<中銀は「増収分は国債の返済に充てるべき」と主張>
一方、イスラエル中央銀行は今回の引き下げについて、「経済状況の弱みは、停滞している輸出と投資分野にあり、民間消費は順調に拡大している。付加価値税の1ポイント引き下げは年間48億シェケルの歳入減に相当し、2016年度の財政赤字の拡大につながる恐れがある」と指摘し、減税をするよりVATの増収分を支払利子の高い国債の返済に充てるべきだとしている。
なお、中銀が9月に発表したマクロ経済予測では、2015年の経済成長率を6月の前回予測より0.4ポイント低い2.6%としている(表参照)。この下方修正について中銀は、第1四半期に発生した化学品輸出トラブル(注)や、その他の輸出品目の需要低下が主な要因としており、輸出については前回の3.5%からマイナス2.6%に落ち込むとしている。2016年については、経済成長率を3.3%と見込んでいる。成長の牽引役と期待しているのは4.2%成長を見込む民間消費(前回予測より0.7ポイント上方修正)で、政策金利の引き下げや燃料費の低下に伴い大きく拡大するとみている。
(注)化学品民間大手のイスラエルケミカル(ICL)が2015年2月末に大規模リストラを実施することを発表したことに伴い、工場従業員ら約2,000人が3カ月間以上にわたりストライキを続けた。ICLは炭酸カリウム、リン酸などを生産、ニューヨーク証券取引所に上場している。2014年の総売上高は61億ドルだった。
(高木啓)
(イスラエル)
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