輸入車に対する特別関税を撤廃
(ウクライナ)
欧州ロシアCIS課
2015年10月06日
政府は2013年4月から導入していた輸入車に対する特別関税を、9月30日に撤廃した。この特別関税は、WTOが日本の要請に基づいて審理し、6月26日に是正を勧告していたもの。
<WTOパネルの勧告に従う>
ウクライナの乗用車の最恵国待遇(MFN)関税率(WTO協定税率)は、排気量1000cc超1500cc以下が10%、1500cc超3000cc以下は8.8%だが、2013年4月から3年間の緊急措置(セーフガード)として、この関税率に上乗せして、排気量1000cc超1500cc以下には6.46%、1500cc超2200cc以下の乗用車に12.95%の特別関税を課していた。その後、この特別関税は段階的に引き下げられ、2014年4月14日からはそれぞれ4.31%と8.63%に、2015年4月14日からは2.15%と4.32%に設定されていた。この特別関税について、6月26日にWTOパネルが出した勧告に従って、9月30日をもって撤廃した。
ウクライナの特別関税について、日本政府は「定められたセーフガード(輸入国政府が自国産業に重大な損害を与える輸入の急増に対して、その損害を回避するために行う措置)の発動要件に違反している可能性がある。また、本措置により日本からの直接の輸入だけで年間約19億円の追加関税が賦課され、わが国産業界への影響も懸念される」との理由から、2014年2月にWTOに紛争処理委員会(パネル)の設置を要請していた。
WTOは2014年9月と11月にパネル会合(口頭弁論)を開催した。そして、2015年6月26日に報告書で、ウクライナのセーフガードは、輸入増加と国内産業の被害に関する要因分析を実施していないことや、WTOのセーフガード委員会への通報義務に違反したこと、発動前に適切な資料を公表せず、関係国との事前協議も行わなかったことなどを指摘。GATTおよびセーフガード協定に整合しないと判断し、WTOパネルはウクライナに対し是正(撤廃)を勧告した。
WTOの裁定に対し、当事国は60日以内にWTOの上級委員会に上訴することが可能だが、ウクライナは勧告に従って、国際貿易委員会と経済発展商務省が特別関税を9月30日に廃止することを決定した(2015年9月10日付委員会決議No.SP-335/2015/4442-06)。
本件について日本の経済産業省は、「WTOパネルの判断により、セーフガードの発動要件が明確化されるとともに、WTO協定に整合しないと判断されたセーフガードが廃止された重要なケース。ウクライナがWTO勧告に従いセーフガードを廃止したことは、近年新興国においてセーフガードの発動が増加傾向にある中、WTOルールの明確化を通じて、恣意(しい)的または不透明なセーフガード発動の抑制に大きな意義がある」(同省ウェブサイト9月30日)とコメントしている。
<縮小の続く国内乗用車市場>
ウクライナの乗用車(新車)販売台数をみると、セーフガードの発動(2013年4月)前は2011年が20万7,435台(前年比22.4%増)、2012年が23万7,602台(14.5%増)だった。
しかし、セーフガード発動以降、多額の対外債務による経済の危機的状況、国内での親ロシア派との武力紛争、通貨フリブニャの大幅下落などの政治・経済的混乱が乗用車市場に大きな影を落としており、乗用車の販売台数は2013年が21万3,322台(前年比10.2%減)、2014年は9万6,983台(54.5%減)と大幅に減少している。2015年に入ってからもウクライナの自動車市場の縮小は続いており、上半期は1万7,203台(前年同期比70.2%減)となっている。
なお、2014年のデータでは輸入乗用車6万2,600台のうち、日本からの輸入が1万1,751台と最も多かった。また、2014年の新車販売台数をブランド別にみると、1位はトヨタで1万296台(シェア10.6%)、2位は中国の吉利汽車で9,365台(9.7%)、3位は国産のザズ(7,908台、8.2%)、4位は現代(5,511台、5.7%)、5位はフォルクスワーゲン(5,419台、5.6%)だった。
(今津恵保)
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