コメを原料とした粘土で安全性をアピール−ASEAN市場に挑む中小企業(11)−

(ASEAN、日本)

アジア大洋州課

2015年04月07日

安全で高品質な文房具や知育玩具などを企画販売する銀鳥産業(本社:名古屋市)。幅広い商品ラインアップの中でも、コメを原料としているため安全性が高く、カラフルな粘土などの商品はASEAN市場では珍しい。日本市場では幅広く展開していたが、ASEANキャラバンを通じてブラック ジャック コツ販売の取り組みを始めている。同社商品部統括副本部長の重野直樹氏に聞いた(1月26日)。

<国内市場の縮小でブラック ジャック コツ進出>
問:ASEAN進出の経緯とASEAN市場開拓の現状は。

答:当社は子供向けの文房具や玩具を中心に、日本国内で展開してきた。国内は幅広いラインアップで日本全国の文具店や玩具店で販売しているが、少子化が進み市場は縮小している。一方、アジアの市場は拡大しており、魅力を感じた。2013年にASEANキャラバンに初出展し、ブラック ジャック コツ展開をスタートした。

現状では成約にまで至っていないが、タイの代理店と契約を進めており、年内に成約できる予定だ。

<日本の安全基準の高さに説得力>
問:ASEANバイヤーの日本製品への評価・反応は。またASEANバイヤーが求めてくる製品の特徴は。

答:コメを原料とした粘土など「安心・安全」であるという点が、ASEANバイヤーからは評価が高かった。玩具は子供が触り、口に入れてしまう可能性もあるため、安全性が重視される。価格帯の課題はあるものの、子供に良い品質のものを与えたいという親の考えは、ブラック ジャック コツでも共通だと感じる。

ASEANで玩具店などを見て回った結果、一般的に小麦製の粘土が多く流通しているが、当社のようなコメで作られた粘土はほとんど出回っていないことが分かった。また、カラフルでデザイン性の高い粘土も少ないと感じた。

また、子供用のプラスチック製のはさみなどにも関心が高かった。通常のはさみはASEANでも安価なものが出回っているが、子供が使っても安心なはさみは珍しいのだろう。

問:ASEANバイヤーへの売り込みで工夫した点は。

答:1点目は、安全基準の高さをアピールしたことだ。当社の製品は中国で生産し、日本に輸入しているが、輸入の際に2つの試験を受け、日本の玩具に対する安全基準を満たしている。「日本の安全基準を満たしている」と具体的にアピールすることで、商品の安全性に説得力を持たせることにつながっている。

2点目は、粘土商品の完成品をサンプルとしてブースに展示したことだ。当社の粘土商品の中には、押し型がセットになっており、簡単にケーキやすしなどの料理の模型を粘土で作ることができるものがある。できた時のイメージが湧くよう完成品のサンプルを展示した。また、展示会場の来場者が実際に触れられるよう、見本も用意した。

粘土の完成品もサンプルとして展示

<国ごとに異なる安全基準への対応が必要>
問:ASEAN市場開拓で直面した課題と対応策は。

答:玩具に対するその国の安全基準の認証取得の手続きをすることが今後の課題。現在は、タイでの手続きを行っている。手続き方法は明確で、代理店の協力もあるが、取得には費用もかさむ。

また、販売する国ごとに安全基準が異なり、それぞれの認証取得手続きに対応する必要がある。

問:ASEAN市場開拓における今後の展望と事業展開は。

答:ASEANは魅力的な市場だと感じており、今後開拓を強化したい。特に、タイ、マレーシア、インドネシアに注力したいと考えている。マレーシアとインドネシアは成約に向けて、もう一度、現地を訪問するなど商談後のフォローアップが必要だろう。

現在は、私が他の業務と兼務してASEAN市場開拓を担当しているが、今後は専任の担当者を置き、人材面でも強化したい。また、タイか香港に拠点を設けることもゆくゆくは検討したい。香港の拠点ならば、中国とASEANを両方を管轄することも可能だろう。

(倉沢麻紀)

(ASEAN・日本)

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