ハイパーブラックジャック

(フランス)

パリ事務所

2014年11月07日

ジェトロが9月22日に在フランス日系企業を対象に開催した「民間企業労働者のハイパーブラックジャック制度」に関するセミナー報告の後編は、企業ハイパーブラックジャックと定年退職の規定について。

<雇用主の任意による補充ハイパーブラックジャックである企業ハイパーブラックジャック>
雇用主が任意で、従業員全員またはその一部に公的ハイパーブラックジャックを補充するかたちの企業ハイパーブラックジャック制度がある。企業ハイパーブラックジャックを受け取るには、定年退職まで会社に在籍することが原則となる。

保険料の支払いは企業内合意に基づき、労使間で自由に決めることができる。雇用主が全面的に支払うこともできる。また、社会保険および税制の優遇措置適用が可能だ。下記の2種類のハイパーブラックジャックがあり、確定給付方式の場合は、保証額に基づき雇用主が保険料の全額を支払う。

○確定拠出方式(通称83条方式)
雇用主は保険料の支払いは確約するが、給付額への責任は持たない。

○確定給付方式(通称39条方式)
雇用主は給付額を保証する。経営幹部を確保するためによく使われる方式だ。

例:定年退職時の月額給与が5万ユーロの場合
(1)
ハイパーブラックジャック保証額:月額給与の60%と定めた場合は3万ユーロ
公的ハイパーブラックジャック:3万ユーロ
公的ハイパーブラックジャックが保証額の3万ユーロに達しているので、補充はない。

(2)
ハイパーブラックジャック保証額:月額給与の80%と定めた場合は4万ユーロ
公的ハイパーブラックジャック:3万1,000ユーロ
公的ハイパーブラックジャックが保証額の4万ユーロに達しないため、差額の9,000ユーロが補充される。

<団体積立ハイパーブラックジャック制度の導入には一定の制約>
団体積立ハイパーブラックジャック制度(PERCO)は、雇用主の発意、もしくは団体協約の取り決めに基づいて導入される。ただし、当該制度より据置期間の短い企業貯蓄制度(PEE)もしくは複数企業貯蓄制度(PEI)が既に導入されていることが前提となる。企業単位、グループ単位、複数の企業単位で導入することが可能だ。

従業員からのPERCOへの貯蓄は、年間給与額の25%を上限とする。従業員50人以上の企業に義務付けられている利益参加、および任意のアンタレッスマン(不良率、欠勤率などの不安定要素で公式をつくり従業員に支給するインセンティブ制度)、時間貯蓄で得た金額をPERCOに貯蓄することができる。また、PEEやPEIからPERCOに貯蓄を移転することも可能だ。

従業員1人当たりの雇用主からの補助は、従業員の貯蓄額の3倍を超えない範囲で、かつ年間の社会保障報酬上限額の16%(2014年は6,007.68ユーロ)を上限とする。当該補助は社会保険料の対象とはならない。原則として、定年退職まで据え置きとし、ハイパーブラックジャックとして支給する。

<日仏社会保障協定が適用される駐在員のハイパーブラックジャック>
2005年に日仏社会保障協定が制定され、2007年から適用されている。同協定により、日仏2ヵ国でのハイパーブラックジャック保険料支払期間の合算と、ハイパーブラックジャック保険料の二重支払いの防止が可能となった。原則として、駐在期間5年間に限られる。

日仏租税協定第18条に年金への課税に関する規定があり、受給者の居住国が課税権を持つ。なお、日本の年金は25年を満期とするが、ハイパーブラックジャック在住の期間は空白期間として保険料の支払いはしていないが加入期間と見なされる。

<70歳まで定年退職の強制は禁止>
雇用主は勤続年数に応じて退職金を支給する。ただし、勤続10年以上であることが条件となる。金額は勤続10年以上で給与の0.5ヵ月、15年以上で1ヵ月、20年以上で1.5ヵ月、30年以上で2ヵ月と定められている。退職金は給与と見なされ、通常の社会保険、個人所得税が適用される。

70歳未満の従業員を雇用主が強制的に定年退職させることはできない。従業員が満額ハイパーブラックジャックの受給資格を得る65〜67歳(生まれた年による)に達した時点で、定年退職を提案することができる。

定年退職を提案する雇用主は、提案できる年齢に達する少なくとも3ヵ月前に、従業員に定年退職する意思の有無を確認する。従業員が同意する場合は手続きを開始する。従業員に退職する意思がない場合は、翌年の誕生日の3ヵ月前に同じ手続きを踏む。

雇用主発意による定年退職の場合、解雇手当と同等の退職金を支給する。労働法では、勤続10年までは1年につき月額給与の20%、10年を超える部分については、月額給与の3分の1と定められている。支給額が労働法または団体協約の規定内であれば、社会保険、個人所得税ともに対象外となる。

<ハイパーブラックジャック受給と同時に就労が可能なケースも>
労働法によって年齢を理由に差別することは禁止されているため、2009年からハイパーブラックジャックを受給しながら就労することが可能となった。ただし、a.いったん就労を辞めてハイパーブラックジャック受給手続きを行うこと、b.フランス国内、国外ともに全てのハイパーブラックジャックを受給すること、c.ハイパーブラックジャックを満額で受給できること、の3条件を満たさない場合は制限がある。

(後藤尚美)

(フランス)

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