ティラワの開発が先行、造成工事も進展−整備進む経済特区(3)−
ヤンゴン事務所
2014年04月11日
新経済特区法では、外国投資法で制限されていた分野における外国企業参入が期待されている。具体的に外国企業が参入できる経済特区(SEZ)の開発については、ヤンゴン近郊のティラワ、南部沿岸のダウェー、北西部沿岸のチャオピューの3地域が指定されている。中でもティラワは、日本とミャンマーの官民が協力し、2015年夏の一部開業を目指し、最も開発が進んでいる。シリーズ最終回。
<SEZでは参入分野緩和の可能性も>
2012年に施行された新外国投資法に対して、以前の外国投資法に比べ各種参入規制が明記されるなど投資家にとって分かりやすい内容となったものの、制限分野が多く、また認可の判断がミャンマー政府側の裁量に任された部分が多いため、早くも改正を求める声が上がっている。
しかし今回、SEZ内においては新外国投資法ではなく、新経済特区法が適用されることとなり、新外国投資法下で制限されていた外国企業の参入分野が、SEZ内では緩和される可能性が出てきた。新経済特区法の下では「外国企業は管理委員会が認可するあらゆる事業を100%出資もしくはミャンマー国民との合弁で実施可能」と規定しており、管理委員会の認可によっては、これまで外国企業の参入が制限されていた金融・保険、物流、卸・小売りなどの分野への参入に道が開かれる可能性もある。
<ティラワでは入居に向けた商談が進行中>
今回の新経済特区法施行によって、2011年1月に施行された「旧経済特区法」と南部のダウェーをSEZに指定した「ダウェー経済特区法」は廃止された。しかし、新法の中で、「旧法下で出された通達類は新法に反しない限り効力を有する」旨が明記されており、関係者によると、旧法下で既に管理委員会が設立されているティラワ、ダウェー、チャオピューの3地域については、新経済特区法下で連邦議会の承認を得る必要はなく、SEZとして認定されている扱いになるという。
SEZとして指定されている3地域の中で、最も開発が進んでいるのがティラワだ。ダウェーは、2010年11月以降、開発権を持ったタイのゼネコン・イタルタイが開発を進めていたが、資金難によって開発が頓挫、現在タイとミャンマー両政府が設立した特別目的事業体が開発を引き継ぐ手続きをしているところだ。チャオピューは、2014年3月、開発のための入札を実施するためのアドバイザー契約をシンガポールのコンサルティング会社と締結したばかりだ。
ティラワSEZはヤンゴンの市街地から南東約20キロに位置する河川港ティラワ港の後背地にある。最大商業都市ヤンゴンに近接するのが特徴だ。全域2,400ヘクタールのうち、約400ヘクタールを2015年夏に優先的に工業団地として開発すべく、急ピッチで造成工事が進められている。
開発会社であるミャンマー・ジャパン・ティラワ・デベロップメント(MJTD)はミャンマー側51%、日本側(3商社)49%出資の合弁企業として2014年1月に設立された。既に外国投資家からの入居に向けた具体的な引き合いが相次いでいる。ジェトロも2014年3月にティラワへの投資を目的とした視察団を派遣したが、45社61人が参加し、入居に向けた具体的な商談に臨んだところだ。
ティラワSEZの強みは、日本政府の全面的な後押しを受けている点だ。日本とミャンマー政府は2012年末にティラワSEZ開発に関した協力覚書(MOC)を締結しており、日本政府は円借款の供与によって同SEZ周辺のインフラ整備を図る考えだ。発電所新設、港湾の拡張、道路の拡幅、橋の新設などのプロジェクトに対する円借款供与が進み、ティラワ開発によって日系企業を中心に、外国企業による対ミャンマー製造業投資が本格化することが期待される。
ビジネス短信 53450ab0f1360