ブラック ジャック オンライン、例外も−アジアの卸小売りと物流への外資規制(1)−
バンコク事務所
2014年01月15日
ASEAN最大の日系メーカー集積地として知られるタイ。累積ベースで、日本の対ASEAN製造業投資の4割近くを受け入れる。一方、サービス業への投資は、製造業に比べそれほど進んでいない。その一因は、原則全てのブラック ジャック オンラインを50%未満に制限する外国人事業法だ。しかし、業種によっては投資委員会(BOI)の奨励措置や、投資額に応じた例外規定により、外資100%出資が認められる場合がある。卸売業・小売業、および運輸業を中心に、現状のサービス業への外資規制の実態と日本企業の参入方法について2回に分けて報告する。
<製造業が牽引する対タイ投資>
2012年末時点における日本の対タイ直接投資残高(国際収支ベース)は、350億4,000万ドル(円建て発表数値をジェトロがドル換算)と、ASEAN10ヵ国向け投資残高の約3割を占める。製造業と非製造業別にみると、製造業の280億6,000万ドルに対し、非製造業は69億8,100万ドルとなっている。ASEAN10ヵ国向け投資残高に対する構成比は、製造業が37%を占めるのに対し、非製造業は15%にとどまっている。
2013年上半期(1〜6月)の日本からタイ向け直接投資フロー(国際収支ベース、ネット)をみると、製造業、非製造業向けはそれぞれ16億900万ドル、2億3,600万ドルで、輸送機械器具(4億4,600万ドル)を中心とする製造業がほぼ9割を占める。非製造業の内訳は、卸売・小売業が1億3,900万ドルで非製造業全体の6割、運輸業が4,900万ドルで2割を占めるなど、一部の業種に偏っている。タイは日本企業にとって、輸送機械器具や電気機械器具、鉄・非鉄・金属などの製造業の主要業種において、いずれもASEAN最大の投資先となっているが、非製造業向けの投資は、周辺国と比較してもそれほど進んでいない。
<原則全てのサービス業への参入を規制する外国人事業法>
タイへの非製造業投資が進まない大きな理由の1つに、タイの外国人事業法による外資出資規制がある。外国人事業法は、外国人に対する規制事業を指定し、同規制業種に参入する場合の条件などを定めたもので、外資比率が50%以上の企業は、同法の定義する「外国人」として規制の対象となる。
同法による規制対象業種は3分類(第1種〜第3種)、43業種に及び、第3種では一定規模に満たない卸売・小売業のほか、ホテル業や飲食業、観光業、エンジニアリングサービスなどの業種についても、国内産業の競争力が脆弱(ぜいじゃく)なことを理由に、外国企業(外国人)参入が規制されている(表1参照)。さらに、第3種には「その他サービス業」の記載もあり、一部の例外を除く全てのサービス業は、包括的にこの中に含まれるものと解釈される。そのため、外資企業が製造業以外の業種でタイに進出する場合には、原則、出資比率が50%未満に制限され、同上限を超える場合には商務省・事業発展局の局長により認可を受け、事業免許を取得することが求められる。
なお、外国人事業法で第3種に含まれる「その他サービス業」のうち、業種によっては製造業とサービス業の線引きが難しく、進出企業が製造業の範囲として現地で行っている事業が、実際にはサービス業に該当する場合がある点に留意しておく必要がある。例えば、メーカーが納入した機械設備をタイ国内の工場に据え付け、メンテナンスや修理などのサービスを一括で提供しているような場合、サービス業として規制の対象になるケースがある。また、原材料や部品の支給を受けて、加工・組み立てを行うような委託加工業の場合、製造請負サービスとして、サービス業に該当すると判断される可能性がある。
<投資奨励法による奨励業種は外国人事業法の規制適用外に>
国内産業保護の観点から外資の参入を規制する外国人事業法に対し、経済の発展に寄与する産業を奨励し恩典を与えるための法律として、1977年投資奨励法がある。その該当業種に対しては、実施機関であるBOIの権限により、さまざまな恩典が与えられる。外国人事業法による規制と、投資奨励法による優遇の使い分けが、タイの投資政策の特徴だ。
前述のとおり、原則全てのサービス業は外国人事業法によって規制の対象となるが、一部のサービス業種は、投資奨励法に基づく奨励業種に当たる。奨励業種に該当する場合、外国人事業法による規制適用から除外され、上限を超えた出資が認められる。
例えば、運輸業については、外国人事業法の第2種のリストに「陸上・海上・航空輸送業」が含まれるため、同法の下では、外国人(外資50%以上の法人)による同事業への参入は事実上禁止と解釈される(表2参照)。もし同法に従って法人設立手続きを進める場合、内閣による事前承認が求められる。すなわち省令に規定された規制と手続きに従い、商務相に事業申請を行い、内閣の承認を経て、商業相から事業許可証を取得しなければならない。また、ここで内閣による承認を得るための条件として、a.タイ人が40%以上の株式を保有していること、b.タイ人取締役数が全取締役数の5分の2を下回らないこと、などが規定されている。
他方、BOIの奨励対象業種には、大量貨物輸送や物流センターなどの業種が含まれることから、それぞれのカテゴリーで申請を行い、BOIの求める認可要件をクリアし、事業登録証を取得することによって、当該許可の範囲において、外国人事業法の規制の適用から除外される。
タイに進出する日系物流業者は、前述の規制に柔軟に対応し、必要に応じて地場パートナーを活用しながら現地での事業展開を図っている。航空、海上、陸上および倉庫業も含む総合物流サービスをグループで展開する日系企業A社の場合、事業領域によってそれぞれ別の法人を設立。国際物流管理や倉庫業については、BOIのルートを活用し、奨励業種としての認可を受けた法人として、外資100%出資による事業を展開する一方、国内陸上輸送や航空輸送、通関業務に関しては、現地パートナーとの合弁による別法人(出資比率は50%未満)を設立している。
<一定規模の卸売業・小売業は外資50%以上の出資が可能>
外国人事業法ではまた、一部のサービス業に対し、一定額以上の最低資本金を条件に、政府の事前認可不要で外資100%出資を認めている。例えば、建設業の場合、5億バーツ(約15億円、1バーツ=約3円)以上、仲介・代理業であれば1億バーツ以上の最低資本金を条件に、政府の事前認可は不要で外資100%出資が認められる。
また、日本企業を含む外資系企業にとって、最も規制緩和の要望が強い卸売業・小売業についても、(1)卸売業で1店舗当たりの資本金1億バーツ以上、(2)小売業で資本金1億バーツ以上かつ1店舗当たりの資本金2,000万バーツ以上を条件に、事前認可を得ずとも50%超100%までの出資が可能だ(表3参照)。ここでの最低資本金は、登録資本の額ではなく、あくまで実際に払い込まれた資本の額を意味する。また、卸売業、小売業のいずれも規定されている資本額は「1店舗当たり」を基準としているため、店舗をネットワーク展開する際には、店舗数に応じた資本金の積み増しが必要となる。
なお、卸売業・小売業のいずれについても、外国人事業法の第3種に該当するため、商務省・事業発展局の事前認可の下、事業ライセンスを取得することにより、前述の資本金を満たさなくても、50%以上の出資が可能だ。ただし、事前認可の取得には通常、(1)既存のタイ企業と競合しない商品(通常は自社ブランド商品に限る)の取り扱い、(2)技術導入(例:指導者を通じたスタッフ研修など)、(3)300万バーツ以上の投資額、などが要件となり、これらに基づき、事業発展局がケース・バイ・ケースで判断を行う。
また、卸売業に関しては、前述の投資奨励法により、国際調達事務所、貿易・投資支援事務所などが奨励事業の対象となることから、BOIへの申請ルートにより、認可を受けたビジネス領域内で100%出資が可能となる。
他方、BOIは現在、2015年1月の導入を目指し、新投資奨励策の策定準備を進めている。現行の奨励業種についても、タイへの貢献度・付加価値に応じて大幅な見直しが予定されており、新政策の動向、当該産業への影響を十分に見極める必要がありそうだ。
(伊藤博敏)
(タイ)
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