第1四半期の英国企業に関するM&A件数は前年同期比2桁減
ロンドン事務所
2013年06月24日
国民統計局(ONS)は6月4日、2013年第1四半期の英国企業に関するM&A統計を発表した。外国企業、英国企業による買収件数ともに、前年同期比で2桁減と大きく落ち込んだ。また、英国企業による国内M&A件数が、統計開始の1969年以降で最低を記録した。背景には国内経済の低迷があり、小売業界では販売店チェーンの破綻が相次いでいる。
<英国企業による国内M&A件数は過去最低に>
2013年第1四半期の外国企業による英国内での100万ポンド(1ポンド=約148円)を超える買収案件は、前年同期比76.5%減の12件、31億9,900万ポンド(24.5%減)で、売却は3件(62.5%減)、7,900万ポンド(前年同期の金額は非公表)だった(図参照)。ONSは、2013年第1四半期の顕著な買収案件として、事業領域やネットワーク拡大を目的とした電通による英広告大手イージス買収(同社公表額31億6,400万ポンド)を挙げている。
英国企業による国内M&Aをみると、統計が開始された1969年以降、件数ベースで最低となる24件(前年同期比61.3%減)、10億4,500万ポンド(2.3%減)だった。うちグループ企業内の売買が7件(46.2%減)、5億1,400万ポンド(2.6倍)で、グループ外が17件(65.3%減)、5億3,100万ポンド(39.0%減)だった。買収案件として、不動産投資信託ロンドン・アンド・スタンフォード・プロパティーズによる同業メトリック・プロパティー・インベストメンツ買収(同社公表額1億9,360万ポンド)があった。
英国企業による外国企業の買収は、入手可能な統計データで件数、金額ともに過去最低の14件(前年同期比44.0%減)、7億300万ポンド(8.9%減)で、売却は7件(12.5%減)、金額は非公表だった。目立った買収案件として、参入地域拡大を狙ったブックメーカー(賭け業者)大手ウィリアムヒルによる英同業スポーティングベットのオーストラリア事業買収(同社公表額4億5,940万ポンド)があった。
M&Aの動きが低調な背景には、英国経済の不振がある。特に小売業界は深刻で、音楽ソフト販売大手HMV、DVDレンタル大手ブロックバスター、カメラ販売大手ジェソップス、若者向けファッション衣料のリパブリック、衣料販売大手エセル・オースティンなど小売販売店チェーンの破綻が相次ぐなど、厳しい経営環境が続いている。
(村上久)
(英国)
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