欧州委、ブラック ジャック 攻略
ブリュッセル事務所
2013年03月22日
欧州委員会は2月13日、EU域内で流通する食品以外の全ての製品に関する市場監視強化および安全性強化のための一連の規則案(パッケージ)を発表した。ブラック ジャック 攻略は、製品の安全性確保、トレーサビリティー向上のため、輸入品を含めたEU域内に流通する製品を対象に、原産地表示を義務付けている。製品の市場監視に関する単一規則案は、規則の一本化や加盟国の市場監視当局の権限強化などを提案している。2015年1月1日からの発効を目指すが、ブラック ジャック 攻略については、英国や北欧諸国などの反対で難航も予想される。
<理事会などの承認を経て2015年1月の発効を目指す>
欧州委は2月13日、EU域内で流通する消費財の安全性を改善し、食品以外の全ての製品に関する市場監視を強化する一連の規則案(パッケージ)を提案した。
今回発表されたパッケージは、(1)ブラック ジャック 攻略(PDF)、(2)製品の市場監視に関する単一規則案(PDF)、(3)2015年までの市場監視に関する具体的な20の行動計画(PDF)、(4)製品のマーケティングに関する認定と市場監視の要求事項に関するEU規則(765/2008)の適用後の評価に対するレポート(PDF)、から構成されている。
消費者製品安全と市場監視に関する2つの規則案は、今後EU閣僚理事会(理事会)と欧州議会が正式に承認すれば、2015年1月から発効し、食品を模した製品を規制する指令(87/357/EEC)(PDF)と 製品安全一般指令(2001/95/EC)(PDF)を置き換えることになる。
欧州委のドゥ・グヒュト委員(通商担当)は1月17日、皮革や繊維などの輸入品に原産国表示を義務付ける規則案の採択を断念する意向を示していた(2013年2月1日記事参照)。原産国表示の義務付けは、一部の加盟国から同意が得られないことやWTOルールとの整合性にも問題があるため、断念する方向となった。
しかし今回の提案は、消費者保護対策を強化するため、欧州委の産業・企業総局と保健・消費者保護政策総局でまとめた案で、食品以外の製品の原産国表示を義務付けるもの。輸入品だけでなくEU製品にも原産国表示が義務付けられており、WTOルールとの整合性はある程度解消される。ドゥ・グヒュト委員も規則案撤回の意向表明に際して、所管の貿易総局以外の部署による規則案再提出の可能性は示唆していた。とはいえ、加盟国間の意見が対立する構図は変わっておらず、今後の審議は難航するとみられる。
<原産国表示の義務付けでトレーサビリティー向上を図る>
消費者製品の安全性の確保については過去20年間、一般製品安全指令(GPSD)によって規定されていた(92/59/EECと、それを置き換えた2001/95/EC)。また同指令では、域内において製品に欠陥が判明した場合の緊急通報システム(RAPEX)の設置を規定している。
今回のパッケージの1つ目の提案は、消費者製品安全の規則案で、事業者にとって規則が分かりやすくなるよう、消費者製品に関連する製品分野別の規定を明確化した。
また同規則案では、グローバルな製品市場に対応するため、製品の特定、トレーサビリティー向上を重視している。これにより、消費者向けの製品のサプライチェーンに関わる製造業者、輸入業者、流通業者は、下記のような義務が課されることになる。
製造業者は、原産国表示を含む、製品の特定およびトレーサビリティーを可能とする情報を提供しなければならない。具体的には、原産国名、製造事業者の名前、登録商標名あるいは登録商標、製品に関する問い合わせが可能な住所を表示する義務がある。また、種類・バッチ・シリアル番号などの製品が特定できる番号を製品に表示する必要がある。ただし、製品上に表示場所がなければ、パッケージ上でも可能とする。
製造業者はまた、テクニカル文書(製品の一般概要と製品の安全性に関する事項、製品のリスクに関する分析、欧州標準のリストなど)を作成し、製品販売から10年間は保管する義務がある。また、製品の安全に関する説明書を消費者が理解できる言語で作成し、添付しなければならない。
続いて、輸入事業者についても、製造業者とほぼ同様な義務が課せられる。製品を販売する前に、安全要項が順守されているか確認しなければならない。また輸入事業者についても、原産国名、輸入事業者の名前、登録商標名あるいは登録商標、製品に関する問い合わせが可能な住所を表示する義務がある。製品上で表示スペースが限られている場合は、パッケージ上でも可能とする。
さらに、輸入業者が貼付するラベルが、製造業者のラベルを見えにくくしないよう十分注意する必要があるとしている。また製造業者と同様に、技術文書を販売後10年間保管および製品安全に関する説明書を添付する義務がある。
最後に、卸業者および小売業者などの流通事業者の主な義務内容について。製品を販売する前に、製造業者、輸入業者がそれぞれのラベルを貼付していることを確認しなければならない。万が一、製品の安全性に問題があった場合は、製造業者あるいは輸入事業者に直ちに連絡を取り(必要であれば市場監視当局にも連絡し)、製品を撤去するか、リコールなどの手続きなどを含め、適切な対応を取ることが求められる。
このように、製造業者や輸入業者に対し、原産国表示や、製造業者および輸入業者の連絡先(住所)表示を義務付けたことが、今回の規則案の大きなポイントとなっている。これらの情報は、加盟国の市場監視当局にとって、トレーサビリティー向上に役立つとしている。
<市場監視に関する複数の規則を1つの規則に統合>
パッケージの2つ目の規則案は、製品の市場監視に関する単一規則案で、食品以外の製品の市場監視規制の簡素化を目的としたもの。同規則案は、市場監視に関する規則の簡素化を求めるステークホルダーや欧州議会の要望に応えるため、GPSDの中で市場監視に関連する部分やRAPEXの規定を製品の市場監視に関する規則案に盛り込んだ。
これまで、EUの市場監査に関する規定は、GPSD、製品のマーケティングに関する認定と市場監視の要求事項に関するEU規則(765/2008)、産業別の規制(CEマーキング)など多岐にわたり規定されており、非常に複雑で分かりにくかった。これらを今回の規則案に全て統合し一本化することで、消費者、事業者にとってより明確になることが狙い。また、これらの複数の規定は内容が重複していることから、重複を省き、新規則で簡素化する。
現在、製品に欠陥が判明した場合の情報データベースとして、RAPEXと市場監視情報システム(ICSMS)の2つが存在することから、手続きの重複や、システム間のシナジー不足が課題であった。今回の規則案では、これら2つのシステムの手続きを統一し、より効率的な仕組みを提案している。
同規則案は、EU域内の輸入製品の税関検査について、製品安全性を向上するために、EU共通の統一ルールの必要性や税関と市場監査当局の協力強化を提案した。税関の管理システムの一部として、リスク・アセスメントに関するEU基準策定の必要性を示した。
また同規則案の特徴の1つに、市場監査当局の権限強化がある。具体的には、製品に重大なリスクがあると市場監視当局が判断した場合、従来の規則(765/2008)では、事業者と協力して必要な対策を講じることができるとあったのに対し、同規則案では、事業者に対応を依頼する前に、独自の判断で必要な対策を講じることが可能としている。また、製品にリスクがあると市場監視機関が判断した場合、事業者に対し、製品のリスクに関する概要や当該リスクを適切に対応する方法に関する文書を要求することができる。さらに、市場監査機関が実施した製品のリスク・アセスメントに係るコストを、事業者に課すことができると提案している。このような市場監視機関の権限強化を図り、リスクのある製品に対し、迅速に適切な対応を実施することを規定した。
パッケージの3つ目の2015年までの市場監視に関するアクションプランでは、Eコマースなどのオンライン上で販売される製品の安全性の確保、EU統一のリスク・アセスメント手法の策定、ハイテクおよびイノベーション製品の安全管理策定に向けた調査、税関での輸入製品の安全性検査の強化および改善、加盟国間における市場監視の協力関係強化などの具体的な20の行動計画を提示した。
<原産国表示では北欧諸国などの反対で難航か>
メイヤー・ブラウン法律事務所パートナーで製品規則の専門家であるモンフォール弁護士にヒアリングをしたところ、原産国表示の義務付けは2005年から議論されてきたが、加盟国の反対もあり、合意にたどりつけない状況が7年続いていた。製造拠点が目立つ賛成派の南欧諸国と、反対派の英国、北欧諸国に分かれている。同氏は、過去の経緯からすると、今後、同規則案は欧州議会では賛成を得るものの、理事会では北欧諸国を中心に多数の加盟国が反対の姿勢を示すだろうと予測する。
また従来、原産国表示の対象は皮革、衣類、靴、陶器などに限られていたが、同規則案により、対象が消費者向けの全ての製品に拡大したことが大きな変更点だとし、製造業者や輸入業者に大きな負担がかかるとの見方を示した。加えて、そもそも品目によっては原産国を決定することが非常に困難なものがあり、原産国表示ラベルが本当に正しいのかどうか、法的不確実性を伴う恐れがあるという。
同氏は、原産国表示ラベルの作成コストについても指摘した。EUが規則案で示した内容と異なる原産国表示規制が存在する国(例えば米国)の事業者にとっては、それぞれの規制に対応しなければならず、二重の作成コストが発生する。さらに、同規則案の第7条(原産国表示の規定)は原産国表示の要件を定めるが、極めて曖昧な規定となっている。具体的な原産国の表示の仕方や、形式、言語、様式の規定がない上、文言も曖昧だ。例えば、原産国表示は「製品上、または製品のサイズや性質上それが無理ならば、包装あるいは製品に付属する書類への表示」も認められるとしている。しかし、何をもって「製品のサイズや性質上」製品上への表示が無理とするのかは、規定されていない。従って、原産国表示を義務付ける7条は、事業者にとって負担となるだけでなく、原産国表示の実際の運用について相当程度の不確実性をもたらすと指摘した。
最後に、最もインパクトの大きいと思われる産業について聞いたところ、グローバルなサプライチェーンを展開している機械、電気、化学産業を挙げた。
ホーガン・ロヴェルズ法律事務所パートナーのローデス・カトレイン弁護士は、今回の原産国表示の非対象製品として、食品、人体や動物向けの医療品、食品に接触する原料など、飼料、生きた植物・動物など、動物由来製品やその派生製品、消費者が移動に使う機材、アンティークの9製品を挙げた。原産国表示の規定による影響が大きいのは、生産拠点や組立工場などが複数国にまたがっている企業、と指摘する。また日系企業への影響という観点では、ラベル表示作成などは中小企業に負担となるとの見方を示している。
(小林華鶴)
(EU)
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