ブラック ジャック ルール ディーラー
欧州ロシアCIS課
2012年09月19日
ギリシャの財政問題に端を発した欧州債務危機は、発生から2年半が過ぎたが、いまだに収まるめどは立っていない。欧州主要国はマイナス成長に突入し、景気回復には時間がかかることが予想される中、欧州の物流ビジネスにどのような影響が出ているのか、業界関係者に聞いた(9月4〜10日)。
<減速続く欧州向け海上貨物>
日本海事センター企画研究部の発表によると、2012年第2四半期(4〜6月)のアジアから欧州への海上貨物量は341万4,800TEU(20フィートコンテナ換算単位)となり、前年同期比4.7%減だった。最近の四半期実績は、2011年第3四半期(5.7%増)、同第4四半期(1.8%増)、2012年第1四半期(0.8%増)と辛うじてプラスを維持していたが、ここにきてついにマイナスに転じた。景気の悪化が海上貨物にも表れてきた格好だ(図参照)。
月別にみても、2012年3月(前年同月比1.3%減)、4月(2.2%減)、5月(3.2%減)、6月(8.8%減)と坂を転げ落ちるように悪化し、歯止めがきかない状況だ。
業界関係者によると、これは日本からの貨物量が落ちていることだけでなく、アジア全体、特に中国、韓国からの貨物量が欧州債務危機の影響を受けて減少していることも原因と分析している。
一方、2012年第2四半期および6月の海上貨物の運賃指数(アジア→欧州)は、それぞれ1TEU当たり1,807ドル(前年同期比39.8%増)、1,770ドル(63.9%増)だった。貨物量の減少とは対照的だが、リーマン・ショックの際にアジア域内航路並みに運賃が下落したこともあり、その反省から船舶会社が供給量を抑えるなどして価格維持を試みている結果だという見方をする業界関係者もいる。
<6社共同運航も減便>
貨物量の減少を受け、海運業界ではアライアンスを組む事例が多くなっている。代表的なのが「G6アライアンス」だ。日本郵船、ハパッグ・ロイド(ドイツ)、OOCL(香港)、商船三井、アメリカン・プレジデント・ラインズ(APL、シンガポールのNOLグループ傘下)、現代商船(韓国)の大手船舶会社6社で構成され、欧州航路の共同運航を2012年3月から始めた。しかし、それもつかの間、週8便の運航を10月中旬から週7便に減便することになった。想定以上の貨物量減少に対し、供給スペースを減らして需給の改善を目指すようだ。
業界関係者によると、円高の影響や欧州ビジネスが低調なことから、輸送コスト削減に熱心な企業が多くなったという。国際物流では航空から海上輸送へ、欧州内物流ではトラックから鉄道輸送へと、より安価な輸送へのモーダルシフトが顕著だという。
<伊藤忠ロジ:中国経済の失速を懸念>
伊藤忠ロジスティクス(以下、伊藤忠ロジ)の田中幸一取締役に欧州の物流ビジネスの現状を聞いた。
伊藤忠ロジの欧州ビジネスは大きく分けて2つの部門がある。100%子会社による「国際物流」と、関係会社によるブラック ジャック ルール ディーラーの2つだ。「国際物流」はデュッセルドルフの子会社(ミラノ、パリにも支店)、およびロンドンの子会社が担っている。自動車部品から機械、太陽光パネル、日用雑貨、化粧品、食品まで幅広く国際物流を行っている。
ブラック ジャック ルール ディーラーについてはユーラシアロジスティクス(以下、EAL)を中核に展開している。1992年にドイツや日本の企業と共同でハンガリーに設立。これは主にハンガリーに進出したマジャール・スズキへのサービス提供を狙ったものだった。現在はハンガリー2拠点、ポーランド1拠点を有し、中東欧への物流を得意とし、自動車部品、完成車、電子部品などの物流サービスを欧州内で提供している。
2011年4月、伊藤忠ロジはEALへ追加出資を行い、持ち株比率を10.9%から26.0%に上げた。田中取締役は「伊藤忠グループ内の事業再編で、ロジスティクスは当社にできるだけ集約しようという動きがあり、(EALへの)伊藤忠商事の出資比率を下げ、当社の出資比率を上げただけ」と背景を説明するものの、一方で、「伊藤忠グループとしては欧州企業の買収を近年何件か実施(注)しており、買収に伴いグループ内で新たな欧州内物流サービスの提供が求められている」と、EALのさらなる活用に期待していることがうかがえる。
欧州債務危機の影響は限定的であり、2011年度の売上高は大きく落ち込むことはなく、横ばいを維持した。同取締役は「リーマン・ショックのときのような急激な売上高減には直面していない。ただ、顧客がコスト削減の観点から値下げ要求に厳しくなっている。従って、要求に対応すべく当社でも欧州の駐在員を減らすなど固定費削減に努めている」と厳しい現状を語る。
また、欧州経済に引きずられるかたちでの中国経済の失速を懸念している。中国はEU向け製品の一大製造拠点になっており、例えば中国産の太陽光発電パネルが大量に欧州に輸出されている。また、太陽光発電パネルには在中日本企業の部品が複数使われており、日本企業への波及も心配だ。欧州経済が失速することで、中国の欧州向け輸出が先細り、中国経済、ひいては日本経済にも悪影響を及ぼすという構図だ。
さらに、欧州委員会が9月6日に発表した、中国産太陽光発電パネルへのアンチダンピング調査開始(2012年9月18日記事参照)の動向も注視している。
中・長期的な欧州ビジネスの見通しについては、「欧州市場は一定の規模を有しており、引き続き重要なマーケット。経済情勢は厳しいことはしっかりと理解しながらも、情勢が変わった際に、次の一手がいつでも出せるように準備を怠らない。現在はぐっと縮んでこらえどころ」とした。
<業界関係者も冷静な見立て>
他の業界関係者も欧州市場については比較的冷静な見通しを立てている。欧州市場はEU27ヵ国5億人のマーケットで、高付加価値製品志向の成熟したマーケットでもある。従って、日本企業の得意とする製品のビジネスは脈々と続き、それに伴い荷物も必ず動く。
また、地理的に遠いこともあり、アジア航路などに比べて輸送単価が高く、一定の売上高が得られる地域でもある。従って、物流業界にとって欧州航路はポートフォーリオから外せない地域だ。欧州債務危機などの停滞期により、仮に貨物量が細ったとしても、欧州ビジネスから撤退するという選択肢は考えにくい、と業界関係者は口をそろえる。
(注)2011年3月、英国の大手タイヤ小売りチェーンのクイックフィット買収。2012年4月、フィンランドのパルプ世界最大手のメッツァファイバー買収など。
(植原行洋)
(EU)
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