高度技能労働者の受け入れを積極化
アムステルダム発
2012年05月07日
出入国管理・移民局(IND)は、EU域外からオランダへの転勤を希望する高度技能労働者向け査証(ビザ)の申請手続きを、より簡素化することを計画している。その実証実験を積極的に行うため、オンライン申請の実験対象を現在の6社から50社に拡大する。
<IND認定企業で働く年給5万1,000ユーロ以上の労働者が対象>
INDのロブ・ファン・リント長官は、アムステルダムのエクスパットセンター(労働者滞在手続きの一元的窓口)の年次報告の発表で、雇用主を通じてのビザ申請にかかる時間はたった2週間で、「ビザの申請手続きは既に移住希望者にとって障害ではなくなっている」と強調した。その上で、同長官はさらに、2012年も「企業、機関や滞在許可を求める外国人向けのサービスの改善に取り組む」と表明した。
オランダは欧州債務危機下にもかかわらず、高技能労働者の受け入れに依然として前向きとされる。11年はEU域外から5,800人の高度技能労働者が流入した。金融危機の影響で09年来、高度技能労働者の移住数は減少していたが、11年には回復し、危機前と同じ水準だ。
国別では、インド(2,020人)、米国(780人)、日本(360人)、中国(320人)の順。職種では、特に研究者が多く、過去最高の1,880人となった。労働者の多くはシェル、フィリップス、ASML、タタインターナショナルなどの企業や、大学または大学病院に勤務している。高度技能労働者のビザは、INDが認定した企業で働く年間給与5万1,000ユーロ以上の労働者を対象に発給される。
<制度の悪用防止で調査・確認を徹底>
高度技能労働者の滞在手続き簡素化を図る一方で、INDは高度技能労働者ビザが悪用されることを警戒しており、制度の乱用を防ぐための措置を導入した。
具体的には、企業が現実には支払っていない高額の給与を申告し、高度技能労働者ビザを不正に取得しようとすることを防ぐため、給与額が業務に見合ったものかどうかを確認・調査することにした。INDが11年以降、46件の調査をした結果、25件はビザの申請要件に適合していないことが判明した。
また、INDは高度技能労働者ビザの制度を活用しながら少数の移住者しか受け入れていない企業を対象に、適合性の見直しを行い、当初6,000社あった対象企業が1,500社まで削減された。
(川西智康)
(オランダ)
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