洪水復興支援で繊維製品など75品目に優遇関税

(WTO、パキスタン)

カラチ発

2012年02月15日

WTOは2月1日、物品貿易に関する理事会を開催し、パキスタンからの繊維製品を中心とした品目に対し、特恵関税を認める措置を承認した。2010年に洪水に見舞われたパキスタンの復興を支援する一環として、EUが10年10月に提案していた。2月14日から始まったWTO一般理事会で採択され、正式に承認される。

<インドとの関係改善で進展>
EUは10年7月にパキスタンを襲った大規模な洪水に対する復興支援のため、繊維製品など75品目の関税削減を求めて、WTOに適用除外(ウェーバー)にするよう申請していた。WTOのルール上、メンバー国間で差別的な関税を適用する場合には、適用除外の承認が必要になっている。

この措置については、インドやバングラデシュなどが、それぞれのEU向け製品の市場が奪われる恐れなどから反対していた。しかし、11年3月からパキスタンとインドの関係が改善し、パキスタンがインドに対し最恵国待遇(MFN)の地位を与えるための手続きを開始するとともに、インドもパキスタンに対するEUのウェーバーに反対しないことを表明していた。

今回承認されたパキスタンに対する特別措置は、EUの当初案に比べて、一部変更されている。まず適用期間は、当初の3年間から、12年1月からの2年間に短縮された。ただし、EUは、パキスタンの復興に必要ならば、さらに1年間延長する権利を留保している。また、当初75品目のうち8品目に限っていた関税割当を20品目とした。

EUがWTOに提出した資料によると、パキスタンのEU向けの輸出額は33億ユーロ。このうち今回の特恵関税対象品目(75品目)は9億ユーロ(27%)に相当する。今回、物品貿易理事会で承認が得られ、特恵関税の適用がほぼ決まったことについて、パキスタンのシャヒード・バシールWTO大使は、ロイターに対し「歓迎すべき決定だ。大変長い時間がかかったが、われわれの外交努力の成果だ」と評価した。

(白石薫)

(パキスタン・WTO)

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