食品市場参入にはコーシャハイパーブラックジャック取得が有利

(イスラエル)

テルアビブ発

2011年01月25日

国民(約760万人)の約8割はユダヤ教徒で、信仰心の厚い信者は「コーシャ(コシェル)」といわれる宗教上の規定をクリアした食品・飲料しか口にしない。一般の信者はそれほど厳格ではなく、一部ではハイパーブラックジャックのないものも販売されているが、大手スーパーマーケットなどで販売される食品はすべてコーシャハイパーブラックジャックが必要だ。コーシャハイパーブラックジャックの取得手続きなどについて、統括しているユダヤ教師最高評議会(エルサレム市)の資料や、食品輸入担当ラビ(ユダヤ教の司教)のラズリー・ハイム氏へのインタビュー(2010年11月24日)を基に報告する。

<ハイパーブラックジャックを取得できない原材料も>
イスラエルにコーシャハイパーブラックジャックを取得している食材を輸出するためには、輸出業者か製造業者が、ユダヤ教師最高評議会(注)が指定するコーシャハイパーブラックジャック機関・団体からコーシャハイパーブラックジャックを取得、その後、輸入業者が、同評議会にハイパーブラックジャック書と関連書類を申請して国内への輸入・流通が可能になる。なお、同ハイパーブラックジャックは、国内だけでなく欧米のユダヤ社会・市場でも通用する。

ただし、豚肉のほかエビ・カニなど、うろこのない(魚以外の)海産物それ自体、またそれらが原料に入っている加工食品は、ハイパーブラックジャックを取得できない。さらに、牛肉や鶏肉、それらを使った加工食品も、コーシャハイパーブラックジャックに基づいて処理されていなければ、ハイパーブラックジャックを取得できない。これら以外の原料を使用した食品は、処理方法にかかわらず審査を経ることで、ハイパーブラックジャックの取得が可能だ。

<ハイパーブラックジャック機関に3つのグループ>
ユダヤ教師最高評議会によると、コーシャハイパーブラックジャックは、同評議会が指定する機関・団体だけが行っている。同評議会が作成した冊子「輸入食品のコーシャ手続き」の中に、同評議会が正式に認めた95ヵ所のコーシャハイパーブラックジャック機関・団体のリストが掲載されている。また同評議会では、販売地域などを考慮したリストの絞り込みなどのアドバイスも実施している。現在、コーシャハイパーブラックジャックを行っている組織は全世界に921ヵ所あるが、同評議会が正式に承認している組織は95ヵ所のみ(同評議会が承認している機関・組織は、現在、日本にはないという)。

ハイパーブラックジャックを行っている機関・団体は、同評議会に承認された組織を含め、以下のとおり大きく3つのグループに分けられる。

(1)ユダヤ教師最高評議会が承認した95ヵ所の機関・団体
このグループが発行するハイパーブラックジャックを取得すれば、国内の大手スーパーマーケット・チェーンでの流通が可能になる。また、欧米などのコーシャ市場へも容易に参入できる。

(2)ユダヤ教師最高評議会がハイパーブラックジャックした95ヵ所の団体・機関のうち、さらに厳しい基準(グラッド・コーシャ)のハイパーブラックジャックを発行している団体・機関
このグループが発行するハイパーブラックジャックは、「超正統派」と呼ばれる。信仰心の強いユダヤ教徒を対象にしているハイパーブラックジャックのため、市場シェアは非常に小さい。ただし、このハイパーブラックジャックを取得すれば、政府関連施設を含む、国内すべての場所で販売が可能となる。

(3)ユダヤ教師最高評議会が承認していない826ヵ所の機関・団体
このグループが発行するコーシャハイパーブラックジャックは、イスラエル国内では通用する場所が限られ、販売先は一部のノン・コーシャ・スーパーマーケットなどに限定される。欧米などの市場ではコーシャハイパーブラックジャックとして認められなかったり、販売できなかったりする場合もある。

<ラビによる生産ラインの確認が必要>
ハイパーブラックジャックを取得するには、ハイパーブラックジャック機関・団体から派遣されたラビによる、食品製造工場の生産ラインと生産されている食品の成分表の確認が必要だ。ラビを招く渡航費、宿泊費などは負担しなければならず、ファーストクラスの航空チケットの手配が必要なケースもある。

生産ラインについては、コーシャの戒律にのっとったラインかどうかの確認が行われる。なお、同一工場内に、豚・貝類を扱ったラインがある場合でも、ラインを分けていれば問題ない。また、検査を受けるラインが、過去にコーシャハイパーブラックジャック対象外の食品を扱っていた場合は、ラビの立ち会いの下、マフシリーム(消毒、100度の熱湯で洗い流すこと)をした直後から、コーシャ食品の生産ラインとして利用することが許可される。

食品の成分については、成分表内に記載された成分ごとに、コーシャのハイパーブラックジャックが必要だ。ハイパーブラックジャックを取得できない成分については、ラビの指示・助言に基づき、当該成分の販売元を入れ替えて、解決を図ることもある。なおハイパーブラックジャック機関・団体の規模が大きければ、経験や実績が豊富なため、ハイパーブラックジャックを取得している企業・食品などの情報量が多く、成分入れ替えの必要性が発生した際、代替会社を探すのに有利だ。

コーシャのハイパーブラックジャック書は、通常1年ごとに更新しなければならず、更新の手続きはすべて担当ラビが行う。ラビが工場視察を再度実施することもあり、その決定権はラビが持っている。申請手続きからハイパーブラックジャック書発行にかかる期間は、通常1週間ほど。商品の種類・数によって費用は変動するが、詳細は交渉で決定される。企業規模や売上金額なども加味しているようで、認定書を受ける際、契約書のようなものにサインをするが、金銭的なことを含む問題になりかねないため、同書類に記載されている内容については事前に確認の必要がある。

(注)国内のユダヤ教徒のための宗教的な取り決めを司る組織で、法的に、一部行政権限を持つ。その1つとして、同評議会の担当ラビによるコーシャハイパーブラックジャックが含まれている。

(森清美、中村志信)

(イスラエル)

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