海外発トレンドレポート

実写 版 ブラック ジャック
(フィリピン・マニラ発)

2023年10月27日

1.サマリー

再生可能エネルギー(再エネ)の新たなビジネスチャンスが開かれる

フィリピンは豊富な再エネ資源に恵まれている。環太平洋火山帯に位置し、貿易風にさらされる立地により、再エネを活用する大きな可能性を秘めている。政府は国内外の民間投資を奨励し、産業の成長を促し、高価なエネルギー輸入への依存を軽減するために、再エネ政策を実施している。 政策には、再生可能ポートフォリオ基準(RPS)、ネットメータリング、グリーンエネルギー・オークション・プログラム(GEAP)、再生可能エネルギー市場(REM)の取引システムの設立などがある。 また、外国投資を呼び込むために、外資100%での事業運営を認める画期的な政策も打ち出している。 本調査では、政府の取り組みや主要セクターの新たなトレンドに焦点を当て、フィリピンにおける再エネ事業への参入チャンスを紹介する。

2.市場概要

フィリピンは、ルソン島のエネルギー消費の30%余りを供給しているマランパヤガス田が数年以内にも枯渇すると予想され、深刻なエネルギー危機に直面している。増加の一途をたどる人口、政府主導のインフラ整備の遅れも指摘され、東南アジアで最も高い電気料金が課題となっている。

そこでエネルギー省(Department of Energy: DOE)は2つのアプローチからなる戦略を立てた。(1)LNG輸入ターミナルの開発(地域的なLNGハブになる計画を含む)と、(2)再生可能エネルギー(主に太陽光発電と陸上・洋上風力発電)への大規模な投資である。フィリピン政府は、国家再生可能エネルギープログラム(NREP)2020-2040において、2030年までに再エネが国内エネルギー供給の35%、2040年までに50%の到達目標を設定した。

2021年時点での設備容量の割合は、石炭(43%)、石油(14%)、天然ガス(13%)、再生可能エネルギー(水力、地熱、太陽光、バイオマス、風力)(30%)で構成されており、総発電設備容量は26,882メガワット(MW)である。再エネ全体の発電設備容量(7,913MW、30%)は、石炭(11,669MW、43%)に次いで2番目に多い。

図:発電設備容量構成割合(2021年)

石炭(11669MW, 43%)、石油(3847MW, 6.2%)、天然ガス(3453MW, 22%)、水力(3752MW, 14%)、地熱(1928, 7%)、太陽光(1317MW, 5%)、バイオマス(489MW, 2%)、風力(427MW, 2%)

出所:「2021 キー・エナジー・スタティスティクス(KES)」フィリピンエネルギー省 (DOE)より実写 版 ブラック ジャック作成

3.各再エネの動向とポテンシャル

水力発電:
フィリピンの水力発電は大きな潜在力を有している。水力発電所は、その容量に基づいて以下のように分類される:(1)マイクロ水力 - 1〜100kW、(2)ミニ水力 - 101kW〜10MW、(3)大水力 - 10MW以上。ルソン島における未開発の水力発電資源は13,097MWと推定され、そのうちの85%(11,223MW)が大水力発電、14%(1,847MW)がミニ水力発電、1%未満(27MW)がマイクロ水力発電である。ルソン島の幾つかのプロジェクトは民間融資が可能であり、20件はフィージビリティ・スタディ中、82件はプレ・フィージビリティスタディの段階である。
地熱エネルギー:
フィリピンは、米国に次いで世界第2位の地熱エネルギー生産国である。2021年時点で、国のエネルギーの約12%を供給する7つの地熱発電所があり、2040年までに発電能力をほぼ倍増させるという長期計画がある。
太陽光エネルギー:
フィリピンは、再エネ目標を達成するため、浮体式ソーラーや分散型ソーラーを含むソーラー・プロジェクトを強化している。 特に、遠隔地での電化率を高めるためのソーラーシステム(PV、ソーラーホームシステム、ソーラールーフトップ)やマイクログリッドの利用が期待されている。
バイオマス燃料:
農業廃棄物をエネルギーに変換するバイオマス施設も設立されている。 生物由来の有機物・作物(サトウキビやココナッツなど)からバイオディーゼルやエタノールを生産するバイオ燃料は、再エネ開発の新たな手段として、注目されている。
風力エネルギー:

太平洋に面し風の影響を強く受ける位置にあり、かつ山がちな地形と気象条件の変動が風を供給しやすくしており、風力発電のポテンシャルが高い。フィリピンでは現在、複数の陸上風力発電所が稼動しており、総設備容量は443MW、最大の陸上風力発電所は、イロコスノルテ州のブルゴス風力発電所(150MW)である。2030年までに設置容量を5,000MWとする目標を掲げている。

また、フィリピンを囲む水域は一貫して強い風が吹いているため、洋上風力発電にも大きな可能性を秘めている。フィリピン政府は、同国の洋上風力発電のポテンシャルを21,000MWと見積もっている。現在商業規模の洋上風力発電プロジェクトはまだ開発されていないが、政府は国内外の企業と、洋上風力発電プロジェクトのための幾つかの風力エネルギー・サービス契約(WESC)を結んでいる。

新たな傾向:
近年フィリピンは、潮力エネルギーや海洋エネルギーによる海洋再生可能エネルギーなど、新たな再エネ技術に関心を示している。 その他、フィリピン工科大学(The Technological Institute of the Philippines, TIP)内の研究開発機関(R&D)である先進電池センター(Advanced Battery Center, ABS)は、フィリピン科学技術省(Department of Science and Technology, DOST)から1億4000万フィリピンペソ以上の資金提供を受け、化石燃料の代替エネルギー源の一つとして、電池エネルギー貯蔵システム(Battery Energy Storage system, BESS)の開発を目指している。
  1. 実写 版 ブラック ジャック

    ミンダナオの地熱発電所

  2. 実写 版 ブラック ジャック

    イロコスノルテのバンギ・ウィンド・ファーム

4.成長見通し

フィリピンには、未開発の再エネが246,000MWあると推定されている。フィリピンの地熱発電設備容量は約1,900MWで世界第3位、第2位はインドネシア(約2,100MW)、第1位は米国(3,700MW)である。

2021年時点で、フィリピンの再エネの発電設備容量の構成割合は30%まで達しているが、これを更に2030年までに35%、2040年までには50%に引き上げる目標である。

これには、以下の目標が立てられている。

  • 地熱発電容量の75%増加
  • 水力発電容量の160%増加
  • 風力発電容量の2,345MW増加
  • 277MWのバイオマス発電容量を追加
  • 284MWの太陽光発電容量を追加導入し、1528MWの目標達成を目指す
  • 国内初の海洋エネルギー施設を開発する

エネルギー省は、2040年までに1,200億米ドルが必要と見積もっており、外国人投資家にとっては十分なチャンスである。

5.政府の奨励策

  1. フィリピン政府は2040年までの計画、国家再生可能エネルギープログラム(National Renewable Energy Program, NREP)を策定し、豊富な財政的インセンティブを提供する狙いだ。

    表:国家再生可能エネルギープログラムによる財政的インセンティブ
    7年間の所得税の免税(Income Tax Holiday, ITH)
    再エネの機械、設備、材料の免税輸入
    原価の1.5%を超えない設備および機械に対する特別不動産税率
    純損失の繰り越し。最初の3年間の損失は、その後7年間の控除として繰り越される
    ITH後の法人所得税率10%
    加速減価償却
    国内で購入された再エネ機器および部品に対して、輸入された場合に支払われる付加価値税及び関税の100%に相当する税額控除
    付加価値税0%
    炭素クレジットの免税
  2. 2022年9月、エネルギー省(DOE)は再エネの需要を増やすために、再生可能ポートフォリオ基準(Renewable Portfolio Standards, RPS)を通じて再エネの割合を増加させる計画を発表した。RPSとは、発電所や電力事業者に再エネを一定割合調達するよう義務付ける制度で、この計画では、2023年から2040年までに再エネの割合を1.0%から2.52%に引き上げる予定である。この変更により再エネの生産と需要を増加させることを目指している。
  3. さらに、2022年11月には、DOEが外国資本による再エネ事業の参入を促進し、外資100%での運営を認める方針を発表した。政府は外国資本の流入を促し、再エネの発電容量を増やすことを期待している。
  4. また、「競争力のある再生可能エネルギーゾーン」(Competitive Renewable Energy Zone:CREZ)は、再エネ資源地域を特定し、送電計画と拡張を促進し、再エネの開発を加速させるための取り組みで、送電アクセスや規制の障壁を克服し、民間セクターの再エネへの投資リスクを軽減させている。
  5. 電力消費者側に対しては、脱炭素化とグリーンエネルギーの普及を奨励するために、太陽光パネルの普及、省エネ製品の促進、グリーンエネルギーオプションプログラム(GEOP)を通じた再エネの購入、分散型電源の活用など、4つの主要イニシアティブを強化している。

6.中小企業の参入チャンスとアドバイス

フィリピン内での再エネの市場はセグメントや地域によってニーズも多様である。またエネルギー規制の環境はまだ発展途上であり不確実性を伴う。しかし豊富な優遇制度や日本とフィリピンは2国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism :JCM)のパートナー国でもあるので、的を絞り取り組みやすい土壌もある。こういった制度の活用も視野に入れつつ、現地関連会社と良好な関係を築く事が必須である


作成
実写 版 ブラック ジャック・マニラ事務所
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本レポートは、日本貿易振興機構(実写 版 ブラック ジャック)マニラ事務所が委託先Visum Global Philippines Inc.に作成委託し、2023年10月に入手した情報に基づき作成したものです。掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、提供した情報の正確性、完全性、目的適合性、最新性及び有用性の確認は、読者の責任と判断で行うものとし、実写 版 ブラック ジャックおよびVisum Global Philippines, Inc.は一切の責任を負いません。これは、たとえ実写 版 ブラック ジャックおよびVisum Global Philippines, Inc.が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

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